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消費者団体訴訟 頼れる救済策に育てたい

 東京医科大の不正入試を巡り、不利益をこうむった受験生に対する大学側の受験料返還義務を認めた東京地裁判決が確定した。国が認定した消費者団体が被害者の代わりに訴えを起こせる「消費者裁判手続き特例法」に基づく裁判の判決は初めてだ。新たな救済措置として定着するよう期待したい。

 今回の訴訟では、特定適格消費者団体に認定された「消費者機構日本」が受験生に代わって原告となった。それによると、東京医科大は2017、18年の入試で女性や何回も受験している浪人生の得点を、ひそかに低く調整していたとされる。

 判決は「得点調整は法の下の平等を掲げる憲法の趣旨に反する」と大学の行為を厳しく指弾。受験料や出願書類の郵送料を賠償する義務があるとした。大学側も非を認め控訴を断念した。

 受験生の将来に関わり、公正であるべき入試で、意図的な差別扱いなど言語道断だ。得点調整を事前に知っていたら出願しなかったと思われるだけに、当然の司法判断と言える。同様の不正は他大学でも行われていた。判決を重く受け止めなければならない。

 特例法は16年10月に施行された。悪徳商法などによる消費者被害は広範に及ぶ一方、1人当たりの被害額は比較的少額というケースが多い。裁判を起こす手間や費用を考えて泣き寝入りしがちな多くの被害者を、まとめて救うため国が設けた制度である。

 手続きは、2段階で行われる。今回の場合、まず大学側に賠償義務があるとする判決が確定した。これを受け、次は団体が該当する受験生に参加を募り、裁判所が一人一人への支払額を決める段階へと移る。

 この制度を利用すれば、被害者は勝訴が確定してから訴訟に参加できるため、敗訴の心配がない。さらには自ら裁判を起こすよりも、簡易な手続きで済むなどのメリットがある。医科大の不正入試という社会の関心が高い問題で、消費者側が勝訴したことを制度活用の弾みにしたい。

 だが、行く手に横たわる課題も多い。施行から約3年半になるが、特定適格消費者団体はまだ全国で3団体。この制度を利用した裁判も3件にすぎず、十分機能しているとは言い難い。

 原因には制度自体があまり知られていない点があろう。消費者団体の多くが財政難という事情もある。敗訴すれば、団体が訴訟費用を負うため慎重になる可能性も考えられよう。国や自治体による支援の拡充も必要だ。

 さらには賠償の対象が財産的被害に限られる。精神的苦痛への慰謝料などは対象外のため、別の裁判で争っている受験生もいる。救済の範囲拡大も検討課題と言えよう。

 制度の利用を重ねながら問題点を洗い出し、改善を図って被害者救済の実効性を高めるよう求めたい。

(2020年03月29日 08時00分 更新)

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