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「セミ寿命は俗説」の若者は… 笠岡高卒業 植松さんの“昆虫愛”

セミの調査などに取り組んだ場所で思い出を振り返る植松さん=笠岡市笠岡、古城山公園
セミの調査などに取り組んだ場所で思い出を振り返る植松さん=笠岡市笠岡、古城山公園
自作の昆虫標本を手にする植松さん。手前は研究記録ノートで、小学生時代は1年に1冊ずつまとめてきた
自作の昆虫標本を手にする植松さん。手前は研究記録ノートで、小学生時代は1年に1冊ずつまとめてきた
「セミの寿命」の研究成果を報じた本紙記事=2019年6月19日付夕刊
「セミの寿命」の研究成果を報じた本紙記事=2019年6月19日付夕刊
 「セミの寿命1週間は俗説!」。そんな話題が昨年、本紙紙面やインターネットのニュースサイトをにぎわせた。笠岡高の植松蒼さん(18)の研究を紹介した記事だ。ほかにも昆虫に関する調査活動で注目されてきた植松さんは今春、高校を卒業し、高知大に進学する。笠岡市を離れる前に、探求心と“昆虫愛”にあふれた少年時代からのエピソードを聞いた。

■反響は国内外に

 「セミの寿命」は、セミの羽に番号をマーキングして放し、後日再捕獲して確認する手法で調査した。セミの鳴き始めの時季から1週間ほど後に死骸があまり見つからないことを不思議に思ったのがきっかけだった。

 2016年夏、さまざまな種類の計863匹にマーキングし、15匹を再捕獲。最長のアブラゼミで32日間、生存することを突き止めた。この研究成果は昨年5月の「中四国地区生物系三学会合同大会」(広島県)で最優秀賞に輝き、本紙は同6月に紙面や「山陽新聞デジタル(さんデジ)」、ヤフーニュースでも紹介。昨年1年間のさんデジアクセスランキングでは新見の局地的豪雨や女子プロゴルファー・渋野日向子選手の記事に次いで3位に入った。反響は国内外に広がり、台湾の雑誌にも掲載された。

■多彩な研究

 植松さんは幼い頃から、自転車で行ける公園や神社を昆虫研究の主なフィールドワークの場としてきた。小学1年の時には、4種類のセミを比較し、種類ごとの鳴く時間の違いを調べ、2年ではセミの羽化時期が雌より雄が早いことを確認する調査を始めた。いずれも夏休み中にほぼ毎日、定点観測。羽化調査の「抜け殻集め」は小学校卒業まで続けた。

 「冷蔵庫で5時間冷やして仮死状態にしたセミが再び動き出すまでの時間は」―。4年時のテーマも驚きだ。倉敷市であった昆虫関係のイベントに参加するため、笠岡市からセミを運ぶ必要があり、「電車で30分。その間に鳴かれたら恥ずかしい」との理由から着手した。その結果、遅いセミでも25分後に大きめの声で鳴いたため、列車の時間内は持たない可能性があり、会場周辺でセミを採集したという。

 セミだけでなく、高校2年時には、南方系の昆虫・ヒラズゲンセイを、広島県内で初となる福山市で発見した。中学時代から3年かけて笠岡市から隣の福山市まで自転車で足を運んで探索し、本州西端での確認につなげた。この成果も本紙やネットニュースで話題となった。

■新たなフィールドへ

 「自分で見て確かめないと納得できない。知識がたまっていくのが楽しいし、うれしい」と植松さんは言う。小学生の頃から、倉敷市立自然史博物館(同市中央)の「むしむし探検隊」に所属し、そこでの様子をよく知る同博物館の奥島雄一学芸員は「目の付け所が鋭く、思ったことを実行に移す行動力もある」と評する。

 昆虫の研究だけでなく、サイエンス部や剣道部にも所属した高校生活を終え、4月からは高知大理工学部に進学する植松さん。大学での学びのテーマとして「自然と人間の共存・共栄」を掲げ、「岡山とは環境や気候が違う高知で新しい昆虫や生き物、植物に出会いたい」と新たなフィールドに胸を膨らませている。

(2020年03月30日 16時09分 更新)

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