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『ダンシングホームレス』 目線の低いドキュメンタリー

(C)Tokyo Video Center
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 路上生活者や路上生活経験者だけで構成されたダンスグループ「新人Hソケリッサ!」の活動を追ったドキュメンタリーだ。身体表現であるダンスは、それだけで十分に映画的な被写体。それを計算された、主に目線よりも低いローアングルで捉え続ける本作には、映画としての魅力が詰まっている。

 とはいえ、彼らは音楽に合わせて一糸乱れぬパフォーマンスを披露するプロのダンサーではない。本作の本当の魅力は、むしろそこにある。主宰者のアオキ裕キは、かつては人気ミュージシャンのPVやCMも手掛ける振付師だったが、ダンス留学したアメリカで同時多発テロに遭遇したことでダンスの方向性を模索し始め、路上生活者の「肉体表現」にたどり着いたという。

 自発的に路上生活者になる人は、恐らくいまい。事情はさまざまながら、彼らは“逃げた”という負い目と共に生きている。そんな彼らに何一つ強要しないアオキのスタンスがいい。「身体の要求にただ従えばいい」というダンスの本質に忠実なのだ。ローアングルは、構図の安定を意図したものであると同時に、彼らの目線の低さに寄り添うアオキの目線でもあるだろう。

 その対極として本作は、SNSにアップされた彼らの動画に対する「分かりにくい」「踊れるなら働け」といった中傷の声も拾う。それは客観的な視点に立つためではない。たとえ日本社会に不寛容や全体主義がはびこっていたとしても、映画だけは多様性を否定しないという映画人としての矜持に他ならない。★★★★☆(外山真也)
監督:三浦渉
出演:アオキ裕キ
3月7日(土)から全国順次公開

(2020年03月03日 08時07分 更新)

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