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ロヒンギャ問題 事態収拾へ国際的連帯を

 ミャンマー国軍による少数民族ロヒンギャへの迫害について、国際司法裁判所(ICJ)が先月、同国政府に対し殺傷や生活の破壊をやめるための「あらゆる措置」を至急取るよう求める緊急的な仮処分命令を出した。

 国際司法の場で初めて深刻な人道危機であると認められた意義は大きい。先月の東南アジア諸国連合(ASEAN)外相会議でも焦点となり、特別支援事務局を設けて平和への取り組みを後押ししていくとの議長声明を出した。事態収拾には国際社会の連帯が欠かせない。

 ロヒンギャは同国西部に暮らすイスラム教徒だ。仏教徒が約9割を占める国民の多くは差別意識を持つといい、当局も不法移民とみなして市民権を与えていない。迫害は軍事政権下の1970年代後半に強まった。

 文民政権へ移行した2016年以降も状況は改善せず、17年にはロヒンギャ武装集団と軍主導の治安部隊などが衝突。国連によると軍の掃討作戦で集団殺害や性暴力、村落破壊が行われ、推定1万人超が死亡、約74万人が隣国バングラデシュに逃れた。

 これを国際条約が禁じる「ジェノサイド(民族大量虐殺)」だとして昨年、イスラム諸国を代表して西アフリカのガンビアがICJに提訴し、審理が続く。ミャンマー政府側は条約違反はないとの主張を崩していない。

 出廷したアウン・サン・スー・チー国家顧問兼外相が軍を擁護し、民主化運動主導者としての評判を大きく傷つけたことは極めて残念だ。

 迫害を主導する国軍が憲法により国会議席の4分の1を握る現状では難しいかじ取りとなろうが、スー・チー氏には問題に正面から向き合い、解決への道筋を示してほしい。仮処分命令が要請した暴力行為の停止や迫害の証拠保全の履行に加え、ロヒンギャが住んでいた地域の現状も国際社会が納得できる形で公開するべきではないか。

 バングラデシュの難民キャンプは現在世界最大で、多くの人が劣悪な避難生活を強いられている。サイクロンなど自然災害への備えが脆弱(ぜいじゃく)なうえに、約40万人の子どもたちが教育を受けられず、児童労働や児童婚、人身取引の被害者となるリスクが高い。

 難民が安全かつ自主的に帰還できる環境の整備が急がれる。18、19年に政府が帰還を認めた際は17年の迫害の説明が不十分などの理由で誰も同意しなかった。ロヒンギャが求める国籍付与についての検討も不可欠だろう。

 ミャンマー政府の主張に一定の理解を示す日本は、既に武器禁輸などを行う欧米などから批判を受けている。

 日本がアジアで最初に始めた、他国に逃れた難民を保護する「第三国定住」について外務省は新年度、ミャンマー出身者らの受け入れを年約30人から倍増させる。人道的な責務を果たすことが大切だ。

(2020年02月22日 08時00分 更新)

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