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テレビのクイズ番組で司会者とし…

 テレビのクイズ番組で司会者としても親しまれた児玉清さんが俳優になったのは「母とパンツが原因」という。著書「負けるのは美しく」に記している▼大学の卒業式の日、家の要だった母が急逝した。決めていた大学院行きを諦め、就職することにした。そこに飛び込んできたのが俳優試験の知らせだった▼受ける気はなかったが、その日の明け方、母の「行きなさい」の声を夢で聞く。バスに飛び乗り、遅れて会場に着いた。しかも、水着持参とあったのを見落とし、パンツ姿で臨んだことで注目された。ただ、ハプニングがプラスになったと笑えるのも後になってからだ▼新型コロナウイルスの感染拡大で、就職情報サイトの運営会社が合同企業説明会の中止を決めた。全国で予定され、来年卒業の大学生ら約3万~5万人の参加が見込まれていたという。就職活動が本格化する中、学生の戸惑いは大きかろう▼幸運にも開けた俳優の道は、いつももやもやとした敗北感に包まれていた。9年前に逝った児玉さんはそう振り返る。自分の未熟な演技への口惜しさなどで、母の「行きなさい」を呪った、と▼その中で心に期したのが「負けるのは美しく」。うまくいかない時にこそ人間の心は現れるという。予期せぬ事態や、もやもやとした社会の不安を前にして、就活生でなくても響く言葉だ。

(2020年02月22日 08時00分 更新)

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