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客船の集団感染 拡大防止と支援を尽くせ

 横浜港に停泊するクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」で起きた新型コロナウイルスの集団感染が深刻化している。これまでに確認された乗客乗員の感染者は200人を超えた。長期滞在によるストレスや環境悪化も懸念されている。感染の拡大防止に努め、船内でのケアにも全力を挙げてもらいたい。

 まだ約3500人が残っており、下船は19日以降になる見通しだ。感染者がさみだれ式に判明しているのに情報提供が十分でないことや、先行きが見えない点に乗客らは不安を募らせているという。

 船室での待機は潜伏期間がある以上やむを得ない措置ではある。しかし、閉ざされた隔離生活は疲労がたまり、感染していなくても健康悪化が心配される。日ごろ服用する医薬品や衛生用品の不足、医療支援の少なさを訴える声も上がっている。

 厚生労働省はきのう、乗客乗員のうち高齢で持病がある人にウイルス検査を実施し、陰性が確認されれば優先的に下船させると発表した。病院機能を持つ「病院船」の活用も検討しているという。ようやくではあるが、今後も要望を丁寧に聞き取り、可能な支援を届けることが大切だ。

 乗客が求める全員へのウイルス検査も、下船後に偏見などを受けないよう検査機関や大学などと連携して実施してあげたい。

 残念ながら、ここまでの船側や政府の対応は後手に回ったと言わざるを得ない。

 途中下船した香港人男性の感染が今月1日に判明して以降も、5日朝まで通常の食事や交流会が行われていた。この「空白期間」に感染が広がった可能性がある。乗客に接触する乗員も感染ルートの一つになったとみられる。

 初動で危機感に欠けたのは政府も同様である。世界保健機関(WHO)の船舶衛生ガイドには、人と人との接触制限やウイルスが付きやすいドアノブ、手すりの清掃に注意することなどが規定されている。早期に何らかの対応を船側に求めていれば、ここまでの感染拡大はなかったのではないか。

 日本は中国に次ぎ、感染者が2番目に多い国となり、訪日を控える動きも出始めた。とはいえ、大半はクルーズ船と武漢からチャーター機で帰国した人が占め、感染が流行している状況ではない。

 ただ船には外国人の乗員乗客も多く、海外メディアの中には日本の対応を批判するものもある。信頼を損なうことは風評被害やイメージダウンにつながりかねない。

 一方、チャーター機の第1便で帰国し、ホテルなどに滞在していた人たちは全員の陰性が分かり、帰路に就いた。

 私たち一人一人は過剰に反応せず、正しく感染症対策を励行したい。流行を防ぐには状況に応じた水際対策をはじめ、全国どこで発生しても診断や治療、経過観察ができる態勢の整備が求められる。

(2020年02月14日 08時00分 更新)

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