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読書バリアフリー 本の楽しみを全ての人に

 昨年6月施行の「読書バリアフリー法」に基づき、視覚や上肢の障害、発達障害などがある人が読書しやすい環境の整備に向けた国の基本計画案が示された。5月ごろに正式決定する。

 いま現在、図書の大半は紙の印刷物である。目が不自由な人だけでなく読字障害のため文字の特徴が区別できない、寝たきりでページをめくれないなど、さまざまな理由で利用が困難な人がいる。情報格差を防ぐためにも、誰もが自由に読書できる環境を広げることが大切だ。

 世界盲人連合によると出版される書籍のうち点字や音声に翻訳されたものは先進国で約7%、途上国で1%に満たない。国際的なニーズを背景に、著作物をこうした形式に複製しやすくするよう各国へ促す「マラケシュ条約」が2013年に採択され、日本も18年に批准した。

 法律は当事者団体の要望を受けて超党派の議員連盟がまとめた。障害の有無にかかわらず「全ての国民が等しく読書を通じて文字・活字文化の恵沢を享受できる社会の実現に寄与する」とうたう。

 国には基本計画の作成と財政措置を義務付け、自治体も地域の実情を踏まえた施策の実施が求められる。丁寧に協議を重ね、実効性ある枠組みを作ってほしい。

 基本計画案は新年度から5年間で政府が取り組む施策を定めた。公立図書館などで点字図書や文字が大きい拡大図書、音声図書の所蔵を充実させ、利用を支える司書らの育成に取り組むとする。

 今後、最も多くの利用者が想定されるのは電子書籍である。音声読み上げ機能や、文字の背景色や段組みを変える機能を使えば、より幅広い人が本に親しめる。従来はテープなどに録音されていた音声図書もデータ化が進んでおり、手持ちのパソコンや携帯電話で再生可能だ。

 インターネットを通じ書籍の文字、点字、音声の電子データを提供する仕組みの強化も盛り込まれた。全国の図書館は自館で購入したり、点訳・音訳したりした障害者向け資料を相互に貸借している。近年は計約70万件をオンラインでつなぐ書誌データベース「サピエ図書館」や国立国会図書館の送信サービスに登録すれば、データが即座に取得できる。

 ただ国会図書館が約1400の公立図書館に行った17年度調査では、サピエ加入は岡山県立図書館など11・5%にとどまった。利用も限られるという。障害者向けサービス自体の周知が欠かせまい。

 新刊の電子書籍を巡っては、出版業界が無断流用の懸念などからデータ提供に慎重な構えを見せている。既存書籍のデータ化を担う点訳・音訳者の不足も指摘される。

 本を読みづらい高齢者や日本語を学ぶ外国籍の人はこれから増えていく。活字文化の便益が行き渡る地域づくりを官民で連携して進めたい。

(2020年02月11日 08時00分 更新)

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