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少年法適用年齢 引き下げには弊害が多い

 少年法の適用年齢を20歳未満から18歳未満に引き下げる改正案について、政府は今国会への提出を見送る方向で調整している。

 年齢引き下げの是非については法制審議会(法相の諮問機関)が3年近く議論してきたものの結論は出ていない。引き下げには公明党が強く反対し、与党内の調整のめどもついていない。こうした中での見送りは当然だろう。

 適用年齢の見直しは、18歳選挙権を導入した改正公選法の付則に、検討するよう規定されたのが発端だった。自民党が引き下げを打ち出し、2017年に法相が法制審に諮問した。

 少年法は、更生の可能性が高い少年の保護と立ち直りに主眼を置く。現行制度では少年事件は全て家裁が少年の成育歴や家庭環境などを調べた上で、少年院送致や保護観察などの処分を決定する。ただし、殺人などの重大犯罪では刑事処分相当と判断して検察官に送致するケースもあり、この場合は成人と同様に起訴され、刑事裁判を受ける。

 家裁が扱う少年事件のうち、18、19歳は半数近くを占める。適用年齢を引き下げれば更生の対象外となる。家庭での虐待や貧困が非行に結びついていることは少なくなく、矯正教育を受ける機会を失えば再犯リスクが高まるとの指摘がある。特に多くの非行少年と接してきた少年院の元院長や家裁の元調査官らが相次ぎ反対を表明していることは重く受け止めるべきだ。

 改正民法で18歳からが一人前の大人として扱われるようになり、整合性を問う意見もあるが、飲酒や喫煙は20歳以上が維持された。法律はそれぞれ目的が異なる。引き下げありきでなく、少年犯罪の現状を踏まえて制度を考えるべきである。

 少年による刑法犯は減少傾向にあり、18年の検挙数は3万人余で戦後最少だ。ピーク時の1983年の2割に満たない。少子化が進んだという理由だけでなく、人口比をみても減少傾向にある。少年法がこれまで、一定の成果を上げてきたことは確かだ。

 一方、少年事件は減ったが、神戸市の連続児童殺傷事件などを受け、少年の厳罰化を求める世論は度々、高まってきた。2000年以降、少年法は相次いで改正され、刑罰の対象が「16歳以上」から「14歳以上」に、少年院送致できる年齢下限は「14歳」から「おおむね12歳」に引き下げられた。有期刑の上限は15年から20年に引き上げられるなど、厳罰化が進んできた。

 昨年末になって法務省は法制審に新たな「たたき台」を示した。18、19歳の事件について、検察官が起訴するかを判断し、残りを家裁に送る案と、家裁にいったん送った上で検察官に送る事件の範囲を拡大する案だ。家裁の関与を強める方向で、ますます現行の仕組みに近づいている。着地点を見いだすために迷走している印象が拭えない。

(2020年02月04日 08時00分 更新)

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