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デジタル通貨 議論尽くして知見深めよ

 中央銀行が発行するデジタル通貨について、日銀や欧州中央銀行(ECB)など六つの中央銀行が連携し、共同研究に乗り出した。年内にも報告書を取りまとめる。

 中央銀行によるデジタル通貨を巡っては、米国が米ドルを中心とした国際金融システムを維持したいほか、日本や欧州連合(EU)など主要な先進国も「技術研究はしているが発行計画はない」との立場だ。一方で、日本でもスマートフォンによる決済などキャッシュレス化が着実に進んでおり、今後、デジタル通貨発行の必要性が急速に高まる可能性もある。

 金融システムをはじめとした経済活動や社会生活にどんな影響を与えるのか、安全性をどう確保するのかなどについて、議論を深める意義は大きい。幅広い観点から検証することが求められる。

 デジタル通貨は、インターネット上でやりとりされ、財産的な価値を持つ電子データで、「ビットコイン」などの暗号資産(仮想通貨)も含まれる。ただ今回、共同研究するのは、ビットコインなどとは違い、中央銀行による法定通貨のデジタル化である。

 デジタル通貨のメリットでは、送金や決済を安く簡単にできるほか、紙幣・硬貨製造のコストがかからないことなどがある。半面、サイバー攻撃による窃取、マネーロンダリング(資金洗浄)や不正送金に悪用されるといった懸念もつきまとう。

 共同研究の契機となったのが、米交流サイト大手フェイスブック(FB)が昨夏打ち出したデジタル通貨「リブラ」の発行構想だ。

 FBは世界に約27億人のユーザーを抱える。仮にドルなどの既存通貨に匹敵する量のリブラが広く流通すれば、中央銀行が自国通貨の金利や量を調整して物価安定を図る金融政策の影響力が大きく損なわれる恐れがある。

 リブラに関しては、昨秋の主要20カ国・地域(G20)の財務相・中央銀行総裁会議が「深刻なリスクがある」とし当面は発行を認めない方針で一致した。国際的な金融システムを根底から揺るがす恐れがあり、各国が警戒感を強めたのは当然だろう。

 さらに「デジタル人民元」の発行を目指す中国の動きも共同研究の背景にある。中国はデジタル通貨の基盤技術で、複数のコンピューターで取引を監視する「ブロックチェーン」の研究を加速させるなど準備を進めている。

 巨大経済圏構想「一帯一路」などで影響力を強める中、デジタル人民元が国際的に広がれば、ドルを基軸とした金融面での日米欧の優位性が脅かされる懸念がある。

 共同研究では、英国、カナダ、スイスのほか、キャッシュレス化の進展でデジタル通貨に先行的に取り組むスウェーデンの中央銀行も参画している。世界金融の健全な発展に向け、論議を尽くし知見を深めてもらいたい。

(2020年02月03日 08時00分 更新)

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