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英国のEU離脱 真の正念場はこれからだ

 英国は、1月31日午後11時(日本時間きょう午前8時)をもって欧州連合(EU)を離脱する。EUから加盟国が抜けるのは初めてだ。

 戦後欧州の経済統合や地域融合の拡大を目指し、加盟国が28カ国に及ぶEUの歴史的転換点といえよう。双方の行く手には難題が山積し、先行きは定かには見通せない。

 1月29日、英国のラーブ外相が離脱条件をまとめた協定の批准文書に署名。EU側も離脱協定を承認して手続きを完了した。

 2016年の国民投票でEU離脱の方針を決めて約3年半。この間、少数与党の保守党政権がEUとまとめた離脱条件を巡る議会との対立で混迷を深めたが、ジョンソン首相がEUと新合意案を結ぶことに成功。昨年12月の下院総選挙で与党が圧勝し、離脱に道筋がついた。

 経済に混乱を招くと懸念された「合意なき離脱」をひとまず回避できたことは評価したい。しかし、最終的な完全離脱へどう展開していくのか、正念場はこれからだ。

 英国は環境の激変を避けるため、今年末までEUに事実上残留する「移行期間」に入る。今後は、期間内に英国とEUの間で自由貿易協定(FTA)を締結できるかどうかが大きな焦点といえよう。

 移行期間の終了と同時にFTAが発効しなければ、高い関税が課される恐れがある。しかし、一般的に締結には数年を要し、11カ月では難しいと指摘する専門家は多い。

 移行期間は互いの同意で最長2年延長できるが、ジョンソン政権は延長しない方針だ。再び「合意なき離脱」が懸念されるような混乱を招かぬためにも、英国には柔軟な対応を求めたい。

 離脱は英国とEUの双方に重い問題を突き付ける。英国では、離脱の是非を巡る国民間の亀裂の修復が急がれる。

 新たな離脱合意では、英領北アイルランドだけを実質的にEU関税同盟に残す。陸続きのEU加盟国アイルランドとの国境管理を復活させない“苦肉の策”だが、英本土から切り離されることへの反発は強い。EU残留派の多いスコットランドでは再び独立機運が高まっている。

 英国で活動する企業の中には、欧州の他の国に拠点を移す動きが活発だという。経済的な立て直しも問われよう。

 EUにとっても英国の退場は、人口や国内総生産(GDP)の縮小をもたらすとともにフランス、ドイツと並ぶ主要な柱の一つを失うもので大きな痛手だ。穴が開く拠出金の手当ても迫られる。

 トランプ米大統領をはじめとする「自国第一主義」などに対峙(たいじ)してきたEUの国際社会での存在感の低下は避け難い。改めて加盟国の結束を強め、諸課題に向き合わなければならない。

 欧州の安定的発展は、世界経済や国際秩序の上で欠かせない。英国とEU双方の良好な関係づくりを求めたい。

(2020年02月01日 08時00分 更新)

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