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上山棚田から始めた鹿革事業 里山の価値をつなぎたい

鹿革の加工作業に取り組む筆者
鹿革の加工作業に取り組む筆者
鹿革を使った作品
鹿革を使った作品
 私が美作市の上山棚田で暮らし始めて9年目を迎え、このたび鹿革の活用事業を始めました。法人名は「Tsunag(ツナグ)」です。ジビエや鹿革の活用を通して、里山に昔から続く価値をこれからもつなぎたいと名付けました。

 これまで耕作放棄され荒れ果てた棚田の再生活動を仲間と行ったり、40年以上にわたって空き家となった古民家をDIYで直して宿にしたりしてきました。竹やぶや笹やぶがなくなって、四半世紀ぶりに水田を再生できるところもできました。先人の思いだけでなく、新しい価値や関わりを棚田に注ぎ込んでいます。

 しかしそのような場所にもイノシシやシカなどの獣は遠慮なしに入ってきます。岡山県内での被害は年間3億円以上(2018年、岡山県資料)にもなります。美作市内でも森林の新芽ばかり食べて山が育たなくなったり、田んぼに侵入してきて米を食い荒らしたりし、多くの人が大変な目に遭っています。

 この数年、少しずつ試しながら分かったことがあります。獣害対策にはいろいろな方法がありますが、まずは捕獲したシカの革を活用するところに活路があると感じました。美作産の鹿革は、①肌触りが良い②耐久性がある③日本人が昔から使ってきた文化がある④なんといっても岡山県産-といった特徴があります。製品化し販売することで雇用を生み出し、狩猟に関わる人口が増えれば、課題解決につながると考えたのです。

 鹿革は肌触りが良く、耐久性があり、使い込むほど手になじんできます。キズやシワもありますが、個性と捉え一つ一つ違った表情を楽しめます。そして、革製品を通してのぞくことができる棚田の景色や暮らしにも興味を持ってもらえたらと思っています。みなさんが手に取ってもらえることで、里山を作っていくことにもつながります。

 革の製造には兵庫県の工場と提携しタンニンという植物由来のなめし方を行っています。「なめし」とは、動物の皮からタンパク質、脂肪、不純物を取り除いて、革製品として加工しやすくする工程のことです。安価で効率よく生産できる方法もあるのですが、「植物タンニンなめし」ならではの風合いがあります。棚田と同じで効率性は高くありませんが、手を掛けただけの良さが出ます。いまは財布、名刺入れ、ペンケースやバッグなどを作成しています。

 美作市の棚田から始めた鹿革の事業。手に取ってもらった方々が喜んでくれる商品づくりに努めます。どうか応援よろしくお願いいたします。



梅谷真慈(うめたに・まさし) 奈良県出身。1986年生まれ。2011年、岡山大学大学院環境学研究科修了後、SNSをきっかけに関わりを持った美作市・上山地区に移住。棚田再生に取り組むNPO法人英田上山棚田団の理事を務めている。棚田団の活動は13年、日本ユネスコ協会連盟による「プロジェクト未来遺産」に登録、16年には農林水産物や景観などを生かした地域活性化の成功事例「ディスカバー 農山漁村(むら)の宝」(内閣官房など主催)に選ばれた。棚田団のホームページ(http://tanadadan.org/)でも発信中。

(2020年01月30日 09時48分 更新)

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