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増える訪日客 「地方分散」どう加速する

 昨年1年間に日本を訪れた外国人旅行者が、推計3188万人と7年連続で最多を更新した。日韓関係の悪化に伴って韓国人客が激減したことが響き、伸び率は前年比2・2%にとどまり、ブレーキがかかった格好だ。

 今年に入ってからは、中国での新型コロナウイルスの感染拡大を受け、中国政府が海外への団体旅行の停止に踏み切った。インバウンド(海外からの誘客)は着実に拡大してはいるものの、社会情勢に大きく左右される実情も改めて浮かび上がった。

 政府は東京五輪イヤーである今年の訪日客を4千万人とする目標を掲げる。だが、韓国人客は両国の航空網が既に縮小されたこともあって急回復は見込めない。新型コロナウイルス流行も短期間での収拾が困難になれば観光への影響は長引く。伸びはさらに鈍化することも予想される。

 外国人客による昨年の消費額を見ると、前年比6・5%増の約4兆8千億円と、こちらも7年連続で最多だった。全国の観光地ににぎわいをもたらし、地域の経済を支える上で海外からの誘客は欠かせぬ存在となっている。

 近年顕著なのは東京、大阪、名古屋の三大都市圏以外を訪れる人の増加である。宿泊者の伸び率は2018年、青森と宮城(ともに前年比約45%増)、山形(37%増)と東北が上位を占めた。絶対数はまだ多くはないものの、地方でしか体験できない伝統文化や歴史などに関心を寄せる人が増えているのは確かだ。

 中四国地方では岡山47万人(6・0%増)、広島121万人(30・7%増)、香川53万人(9・3%増)だった。

 日本政策投資銀行岡山事務所がまとめたインバウンドに関する19年の調査によると、12カ国・地域の海外旅行経験者約6千人へのアンケートで岡山の認知度は12・7%にとどまった。近隣では広島(37・5%)や大阪(53・9%)とは開きがある。岡山を知っている人のうち実際に訪問したい人は27%だった。地方分散の流れをとらえ、さらに促進することが鍵となろう。

 岡山県は新年度、後楽園(岡山市)で新たに欧州の観光客に狙いを定めた事業に乗り出す。着物や袴(はかま)姿で散策する和装体験や茶道の体験に、欧州で関心が高いとされる能楽の公演を組み合わせることなどを検討している。

 昨年開かれた瀬戸内国際芸術祭で多くの外国人を引きつけた瀬戸内海の島々も、芸術祭の開催年に限らず人を集められる十分な魅力と可能性があろう。地域の資源を生かす知恵と工夫が求められる。

 一方、海外からの誘客で先を行く京都や北海道、鎌倉(神奈川県)などは、生活環境が悪化する「観光公害」に苦慮している。海外誘客はあくまでも地域活性化につながり、住民にとってもプラスになることが前提だ。各地で浮かび上がった課題を教訓に「持続可能な観光」を目指したい。

(2020年01月30日 07時30分 更新)

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