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就職氷河期支援 官から民へ機運広げたい

 大学などを卒業した際、バブル経済崩壊で就職難だった30代半ばから40代半ばの就職氷河期世代の支援に、政府が本格的に動きだした。

 先月まとめた総合的な行動計画で、今後3年間で正規雇用を30万人増やすことを目標に、計650億円超の予算を確保するとした。新たに交付金制度を設け、職業訓練を受ける際の交通費支給や、地元企業への就職を前提とした奨学金返済の支援など自治体の取り組みを可能にする。

 この世代に対象を絞った求人を解禁するほか、国家公務員の中途採用枠での重点採用も打ち出した。今夏に向け省庁横断の統一試験の概要を固めるが、厚生労働省と内閣府は先行的に募集した。

 驚くのはその倍率である。厚労省は10人の採用予定に1934人、内閣府は若干名に約680人が応募した。十分な能力を身に付ける機会がないまま安定した職業に就けず、今も苦労している人が少なくないことを改めて浮き彫りにした。

 氷河期世代を積極的に中途採用する動きは、国に先行する形で自治体で始まっている。昨年8月に募集した兵庫県宝塚市は1635人が受験して最終的に4人が内定、倍率は400倍を超えた。

 昨年12月1日時点の総務省調査で、2019年度に試験を行う自治体は尾道市など19あり、その後も複数の自治体が表明した。岡山市も県内の自治体で初の試みとして、事務の正規職員6人程度の募集を2月に始め、秋の採用を予定していると発表した。

 国や自治体だけでなく、能力を生かせる場を民間にも広げ、支援の機運を社会に広げていくことが必要だ。

 支援策を巡っては、氷河期以降も希望する仕事に就けなかった学生はおり、なぜこの世代だけが対象なのかと不公平感を指摘する声もある。

 だが、バブル崩壊後に企業は正社員の採用数を絞り込み、さらに政府の規制緩和によって派遣労働の範囲が拡大していった。不況を乗り切るためにこの世代が犠牲になった側面は否めず、苦境を単なる努力不足と片付けることはできない。

 産業構造の変化が激しく、求められる技能も変わる今、非正規雇用や無職の人に対する就労支援は世代を超えて重要である。氷河期世代をその第一歩としたい。

 これまで、政府の対応は後手に回り、その代償が社会のさまざまな方面に及んだ。就職難に苦しんだ世代の未婚率は上昇し、少子化が一段と進んだ。老後への備えも十分にできず将来、低年金で困窮し生活保護の受給が増大するという懸念もある。

 そうした中、埋もれた人材を求める企業も増加傾向にあるとされる。少子高齢化を背景に人手不足は深刻だ。政府は自治体や産業界と連携し、安定就労の環境づくりに今度こそ積極的に取り組まねばならない。

(2020年01月29日 08時00分 更新)

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