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20年春闘 維持したい賃上げの流れ

 経団連が、2020年春闘で経営側の指針となる「経営労働政策特別委員会(経労委)」報告をまとめた。

 賃上げは「自社の実情に応じた前向きな検討が基本」とし、基本給を底上げするベースアップ(ベア)も「選択肢となり得る」と容認した。その上で、全社員一律の方法だけでなく職務や成果を重視した配分が適切としている。

 できる企業は働く人の賃金をしっかりと上げ、日本経済の内需を拡大させる消費意欲を後押しすることが重要である。首相が賃上げを企業に呼び掛ける「官製春闘」も手伝い、大手企業の賃上げ率は昨年まで6年連続で2%を超えた。その流れを着実なものにすべきだ。

 米中貿易摩擦などで世界経済の行方に不透明感が漂い、業績が厳しいところもあるのは確かだろう。だが、企業の内部留保(利益剰余金)は460兆円を超えている。一方で、利益を人件費に回した割合を示す「労働分配率」は低水準に落ち込んでいる。昨年秋からは消費税率が10%に引き上げられ、家計の負担感は強まった。利益を賃金に還元して経済の好循環へとつなげてもらいたい。

 また経団連の報告は、年功型賃金や終身雇用を柱とする日本型の雇用慣行を見直す必要性も提起した。経済のデジタル化やグローバル化に伴い、現状のままでは優秀で意欲のある人材を国内外で確保できない危機感があるからだという。

 中途・通年採用の拡大や、人工知能(AI)やデータ解析に携わる人材などを念頭に専門性を評価する「ジョブ型」雇用の活用も盛り込んでいる。一括採用した新卒者に、職場や社内研修で能力を身に付けさせる。こうした従来の伝統的な社員育成のやり方に無理が生じている部分があることは理解できる。

 柔軟な採用や働き方を巡って企業の取り組みは広がるだろう。しかし、長年の労働慣行になっている終身雇用などを拙速に見直すことは、労働者の安定的な雇用を揺るがし、経済格差を拡大させる一因にもなり得る。丁寧な議論の積み重ねが必要なのは言うまでもない。

 企業が取り組むべきものとしては、働く人の約4割を占める非正規雇用への待遇改善も大きな課題だ。今年4月からは「同一労働同一賃金」が大企業に義務づけられ、仕事の内容や成果なども同じなら賃金や手当、休暇などを同じ水準にする必要が生じる。非正規で働く人を正当に評価して報いる制度を整え、格差是正に努めてほしい。

 春闘は経団連と労組側代表の連合が今週開く会合で事実上スタートする。ただ、賃上げの流れは経団連に加盟する大企業だけでなく、地方や中小企業など社会全体に波及させていくことが肝心だ。「人への投資」という観点からも働き方を含めた労使の話し合いを期待したい。

(2020年01月28日 08時00分 更新)

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