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災害避難所 女性の視点生かし運営を

 台風19号など昨年、大規模な災害が相次いだことを受けて国が「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」の見直しを進めている。女性や子育て家庭に配慮した避難所運営が徹底されていなかったためで、内閣府の検討会が年度内に改定案をまとめ、あらためて周知する。

 指針は「避難所に女性用更衣室がない」といった東日本大震災での教訓を基に2013年に策定された。防災基本計画から避難所運営、生活再建支援まで災害に係る全局面で、生活者の多様な視点を取り入れた対策を講じるよう各自治体に促している。

 中でも発生直後からさまざまな人が生活する避難所については、異性の目が気にならない物干し場や授乳室の設置、紙おむつの備蓄など具体的な配慮事項に沿って各地で改善が進められてきた。だが台風19号の被災地ではなお、生理用品が不足するなど課題が残った。

 全国知事会による08年度と17年度の調査を比べると、都道府県・市区町村が作る避難所運営の手引きなどに「プライバシーの確保」「避難所運営への女性の参画の推進」「女性への暴力やセクハラ防止のための対策」などの記述がある割合は大幅に増えた。

 政府が分かりやすい指針を提供する意義は大きい。検討会は来月まで西日本豪雨、熊本地震など被災経験のある自治体・支援団体への聞き取りを行うが、丁寧に声を拾い、議論を深めてほしい。

 日頃から女性の意見をくみ取りやすい体制づくりも欠かせない。各自治体が設ける地方防災会議では女性委員の割合が13年から急増しているものの、18年現在、岡山県15・8%、広島県3・4%、香川県16・7%(都道府県平均15・7%)と、政府目標の30%にはまだ遠い。

 先の知事会調査では女性委員が多い自治体ほどアレルギー対応食、ほ乳瓶、洋式の簡易トイレ、サイズ別の成人用おむつなど、あらゆる「弱者」を想定した備蓄が充実していることも分かっている。

 こうした意思決定の場に加え、避難訓練や避難所運営にも女性が主体性を持って参画したい。男性だけでは気づけない困難に対処でき、運営の担い手となるケースが多い男性の過度な負担も減ろう。「男性は力仕事、女性は食事係」などと性別で役割を固定しない工夫も求められる。

 近年は災害時に性暴力や夫婦間暴力のリスクが高まることも知られるようになった。日中でも避難所となった学校の校庭で幼児が服を脱がされたり、間仕切りの陰で授乳中の母親が襲われたりした報告がある。対策は急務だ。

 避難所で安心、安全に過ごせなければ、在宅避難や車中泊を選ばざるを得ない人が増え、エコノミークラス症候群など命に関わる問題につながる。あらゆる人々の目線を防災の施策に持ち込む意識を高めたい。

(2020年01月26日 08時00分 更新)

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