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新型肺炎の拡大 国際連携で封じ込め図れ

 中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎が、国内外へ急速に広がっている。日本でも新たな感染が確認された。武漢市当局は感染拡大を防ぐため23日から公共交通機関を停止し、街を事実上の“封鎖”状態に置いた。異例の強硬策に事態の深刻さがうかがえよう。

 こうした状況の中で注目されたのが、新型肺炎に関する緊急事態宣言について協議した世界保健機関(WHO)の緊急委員会だった。

 2日間にわたった協議の末、現時点では「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」との認定は時期尚早だとし、宣言を見送った。委員の間では意見がほぼ二分されたが、中国国外での感染例が依然として限定的で少ないことなどから決まったという。

 宣言が見送られたとはいえ、事態は軽視できない。中国では24日夕の時点で、ほぼ全土で800人を超える発症者を確認した。死者は30人近くに上るなど増え続けている。武漢在住の日本人男性が重い肺炎の症状だといい、新型肺炎の可能性もある。

 中国以外での感染確認は日本や韓国、タイといったアジアのほか、米国にも広がっている。日本では神奈川県在住の中国籍男性に続き、新たに武漢からの旅行者の感染が確認された。春節(旧正月)に伴う大型連休に入った中国では、多くの中国人が国内外へ移動するだけに感染の拡大が懸念される。

 武漢市の“封鎖”は、そうした状況をにらんで踏み切ったものだろう。人口が1千万人を超える大都市では異例のことだ。20日に新型肺炎の制圧を強く指示した習近平国家主席の危機感を反映した措置ともいえよう。

 だが、ここまで強硬な手段を講じる必要に迫られたのには、初期対応の遅れや政府の情報統制が感染を広げたことがある。国民の多くが詳しい情報を知らされず、中国の衛生当局が初めて記者会見したのは22日になってからだ。

 武漢には日本企業の駐在員や留学生ら数百人が暮らす。日本政府は邦人への支援に全力を尽くしてほしい。

 中国政府の専門家は、新型肺炎が人から人に感染することを認めた。ウイルスが変異して威力を増す可能性がある。世界的大流行にならぬよう、中国はWHOや各国と情報を密にし、連携して封じ込めを図るべきだ。

 春節には、日本にも多くの中国人観光客が訪れるだけに、備えに万全を期したい。とはいえ、日本国内での感染確認のケースでも示されたように、2週間とされる潜伏期間や解熱剤が服用されることなどで水際でのチェックには限界がある。それを前提にした対策の強化が求められる。

 一人一人の心構えも重要になる。手洗いやうがいを徹底し、マスクを着用して飛沫(ひまつ)感染を防ぐ。新型肺炎を過剰に恐れず、かつ警戒を怠らぬ冷静な行動に努めたい。

(2020年01月25日 08時00分 更新)

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