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大学入試改革 公平公正へ丁寧な議論を

 見通しの甘さから大きな混乱を招いた大学入学共通テストの、仕切り直しの議論が始まった。教育現場の声を丁寧に聞き取り、受験生の不安を解消することが必要だ。

 新年度から始まる共通テストでは、予定されていた英語民間検定試験や国語・数学の記述式問題の導入が昨年、相次いで見送られた。どちらも安倍政権の政治主導による改革の目玉だったが、公平性や公正性に疑問符がついた。

 以前から居住地域や経済状況における格差、採点ミスなどが指摘されてきたにもかかわらず、「導入ありき」で見切り発車したことを、文部科学省はじめ政府は大いに反省しなければならない。なぜこうした事態に陥ったのか、経緯の検証もすべきである。

 今の高校2年生らが臨む共通テストまで1年を切っている。準備を始めている受験生の身になれば、直前になっての大幅な見直しに振り回され、当惑するのが当然だろう。まずは文科省と大学入試センターが、出題や配点の見直しなどの詳細を早急に明らかにすることが大切だ。

 その上で、どのような入試制度が望ましいのかを中長期的な視点で議論することが重要である。15日には、入試改革の在り方を改めて話し合う文科省の検討会議がスタートした。改革の目玉を失ったいま、共通テストの意義や求められる学力などを原点に戻って検討してほしい。

 萩生田光一文科相は、英語についての見直しは2024年度をめどに行う考えだ。民間試験導入で意図していた「読む・聞く・書く・話す」の4技能を測る方針は崩さず、民間業者の活用の是非も含めて議論し、今年末までに結論を示すという。

 総合的な英語力を身につけることには賛成だが、その測定を外部に頼らねばならないのなら、やはり公平・公正の信頼が揺らぐのではないか。拙速は慎みたい。

 国公立大が対象の共通1次試験を前身とし、1990年から続いた大学入試センター試験は、マークシート式に批判があった一方で、問題の質や公平性の確保につながったとの評価もある。

 新年度の記述式問題について文科省は、各大学で積極的に取り組むよう促すとしている。思考力や論述力を問うなら大学の個別入試が妥当だろう。50万人以上が受験する共通テストでその能力を測り、採点のぶれをなくすのはどう考えても無理がある。

 迷走した入試改革は、第2次安倍政権が発足して本格的に動き出し、国際社会で活躍できる人材の育成などを掲げて制度設計された。そうした教育の重要性を否定はしないが、高校や大学の現場の声を十分に聞くことなく、入試制度を変えることで学校教育を変えようという発想なら本来の姿ではない。

 納得いく入試制度に向けての課題を突き詰め、改善を進めてもらいたい。

(2020年01月24日 08時00分 更新)

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