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IR基本方針 立ち止まって議論尽くせ

 政府はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)について、整備地域の選定基準を盛り込んだ基本方針の決定を先送りした。秋元司衆院議員が逮捕されたIR汚職事件を受け、予定していた今月中の決定を急がず、世論の動向を見定める考えとみられる。

 汚職事件ではIR担当の内閣府副大臣だった秋元議員が収賄容疑で逮捕、起訴された。贈賄側の中国企業は他にも自民党4人と日本維新の会(後に除名)の1人の計5人の衆院議員に現金を渡したと供述し、捜査は継続中だ。

 事件の全容解明が待たれる中で基本方針の先送りは当然だ。ただ、政府はIR推進の姿勢は崩していない。きのうの衆院代表質問で、安倍晋三首相は汚職事件について「副大臣に任命した者として事態を重く受け止めている」などと述べたが、IRの推進方針は変えない考えを強調した。

 安倍政権は2016年にIR整備推進法、18年にIR整備法を成立させた。当時、国会審議ではさまざまな懸念が示され、野党が猛反発する中、与党は法案採決を強行した。衆院内閣委員長としてIR整備推進法案の採決を強行したのは秋元議員だった。

 東京地検特捜部は、カジノ参入を目指す中国企業がIR整備地域数の拡大などを秋元議員に求めていたとみて調べているようだ。事件を受け、政府は事業者と政務三役らが接触する際のルールを基本方針に追加することを検討するようだが、今後の汚職などを防ぐ規定を付け足して済む話ではあるまい。政治家と事業者が癒着し、政策形成をゆがめようとしたのではないか、との疑念は拭えていない。

 今月中旬の共同通信社の世論調査では7割がIR整備を「見直すべきだ」と答えた。野党4党はIR整備推進法とIR整備法を廃止する法案を国会に提出した。果たしてカジノは日本に必要なのかを含め、いったん立ち止まり、国会で根本から議論を尽くしてもらいたい。

 政府は「観光立国を目指す上で(IRは)必要」(菅義偉官房長官)と強調するが、日本を訪れる外国人旅行者は昨年まで7年連続で過去最多を更新した。多くの旅行者が求めるのは日本の伝統文化や自然であり、近年はそば打ちなど体験型観光も人気を集める。カジノに頼らない観光立国を目指す選択肢もあろう。

 カジノはアジア各地にあり、日本は後発だ。政府は外国人富裕層を呼び込むというが、実際は利用者の7~8割が日本人になるとの推計もある。採算が取れず、IRが経営に行き詰まれば自治体は負の遺産を抱える。ギャンブル依存症の増加や資金洗浄の恐れといった懸念もある。

 最大3カ所のIR整備に向けては横浜市、大阪府・市、和歌山県、長崎県が誘致を表明しているが、誘致自治体では住民の反対運動も起きている。住民の不安の声に真摯(しんし)に向き合うことも大切だ。

(2020年01月23日 08時00分 更新)

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