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「進歩のない者は決して勝たない…

 「進歩のない者は決して勝たない 負けて目ざめることが最上の道だ」。かつて訪れた呉市の大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)で印象に残った一つは、パネルにあったこの言葉だった。諸説あるが、大和に乗船し、戦死した若い士官が言ったとされる▼言葉は、やはり乗組員だった吉田満が終戦の直後に書いた「戦艦大和ノ最期」の中にある。世界最大だった戦艦は1945年4月、呉を出港し沖縄に向かう途中、米軍機の攻撃に遭った。その前の艦内で、作戦の成否について士官の間で議論があったという▼冒頭の言はこう続く。「日本の新生にさきがけて散る まさに本望じゃないか」。自分の死を覚悟して、その意味を懸命に探したに違いない。せめて後世に生かしてほしいと願った▼そうした思いと誠実に向き合った人である。元乗組員で「大和の語り部」として各地で講演した八杉康夫さん=福山市=が先日、92歳で逝った▼魚雷を受けて沈む大和で多くの死を目にした。海に落ちた後も一人また一人と力尽きた。「重油の海に沈む仲間を見て、いくら戦争でも、人間の死にざまじゃないと思った」。本紙記事でも以前、戦争の愚かさを語っている▼一方で、国のために死んだ仲間は犬死にじゃない、とも話した。彼らの思いに応えられているか。戦後75年。重い言葉が残された。

(2020年01月23日 08時00分 更新)

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