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調べ、まとめ、伝える力備わる 岡山県NIE実践指定校の報告会

岡山県のNIE実践指定校5校が、2年間の成果を発表した実践報告会
岡山県のNIE実践指定校5校が、2年間の成果を発表した実践報告会
 岡山県NIE推進協議会(会長・加賀勝岡山大副学長)は昨年12月26日、岡山市北区柳町の山陽新聞社で県内のNIE実践指定校による実践報告会を開いた。指定2年目の笠岡市立北川小、早島町立早島小、岡山市立岡山中央中、県立勝山高、県立岡山南支援学校の5校が発表。担当教諭は、調べたことをまとめて分かりやすく伝える力、地域や社会に関心を持ち理解する力―などが児童生徒に備わった成果を報告した。要旨を紹介する。

■笠岡市立北川小・立〓 裕睦教諭―算数と国語 正答率向上(〓は「まだれ」の中が、口と又と土)

 「自分の考えを持ち、伝え合う子どもの育成」を狙いに、それに不可欠な的確に情報を読み取る力、書いて伝える力を養おうとNIE実践をスタートさせた。

 毎週火曜の朝学習15分間をNIEタイムとし、ワークシートに取り組んだ。低学年は新聞記事に触れるのが楽しいと思えるもの、中高学年は短時間で記事の内容を読み取って課題に答えるものとした。2年目は授業の学習内容と関連付けた問題を教員が作るようにし、学習テキストとしての新聞の役割が高まった。

 授業における活用では、発達段階に応じたテーマを設けた。低学年は「新聞を使って楽しく活動する」をテーマに図工で新聞を破ったり、つないだりする造形遊びをした。中学年は「新聞を学ぶ」をテーマとした。国語の授業で新聞を作って読む人を意識する難しさを知り、分かりやすい見出しを付けるなどの工夫を学んだ。高学年のテーマは「新聞から学ぶ」。複数の新聞を読み比べて物事を多面的に考えることの大切さを学んだ。

 他にも自主学習で興味を持った記事を切り抜いて要約したり、感想を書いたりするなど活用が広がった。

 新聞を読んだり、新聞の形にまとめることに抵抗を持たない児童が増えた。全国学力・学習状況調査で算数、国語とも正答率が上がった。当初から狙っていた力が付いたからこその結果だと思う。2年間の実践を通し、付けたい力のために新聞を引き寄せて活用することが大切だと感じた。

■早島町立早島小・三宅 亘教諭―読み比べで多面的思考

 早島町は1小学校・1中学校の地域で、児童の多くは9年間を限られた人間関係の中で過ごす。そのため多様な意見に触れる機会が少なくなりがちだ。そこで早島小ではNIEを通じ、社会に関心を持ち、多面的に考えられる子どもを育てたいと考えた。

 まず児童が自由に新聞を読める環境を整えた。司書と協力して図書室前に「今日の一面」コーナーを作り、紙面の読み比べをできるようにした。

 授業では、積極的に新聞作りを行った。例えば5年生は台風への対策をまとめた防災新聞を作り、完成したものは早島町のホームページに掲載。自主学習で興味を持ったことを調べ、新聞の形にまとめる児童も出てきた。山陽新聞社の印刷工場「さん太しんぶん館」が町内にある利点を生かし、見学して新聞作製学習に活用できたことも大きい。

 委員会活動にもNIEを取り入れた。広報委員会は学校行事を知らせる新聞を作り、誰もが見られるように掲示。図書委員会は、自分たちが選んだ記事に投票してもらう「新聞人気コンテスト」を計画している。早島中とも連携し、生徒が作った「部活動新聞」なども校内に張り出している。

 取り組みを通じ、子どもたちから「もっと新聞を読みたい」という反応が出るようになった。調べたことをまとめる力や分かりやすく表現する力が身に付いたと思う。まずは新聞に触れさせてみることがNIEの第一歩。今後も工夫しながら発展させていきたい。

■岡山市立岡山中央中・八方 真治教諭―考え書きまとめる力に

 本年度は「新聞を活用した言語活動の工夫と充実~読む力・書く力・伝え合う力の育成~」をテーマにNIE活動を実践した。

 当日分だけでなく、過去の紙面も読める新聞コーナーを図書室に設置。文化委員が興味のある記事を毎日選び、コメントを添えて掲示した。12月の人権週間に合わせ、点字ブロックやパワハラ、男性育休など人権に関する記事を教員が校内に掲げることも実施。昼休みに新聞を広げる生徒の姿が、次第に増えてきた。

 2年生の国語科は、授業や週末課題で活用。コラム「滴一滴」や教員が選んだ記事を書き写して、感想・意見も付け加えた。社会科では、新元号や改憲に関する記事を使って教員がワークシートを作成し、3年生が解いた。

 主に夏休みの宿題として、1年生は社会科と理科、2年生は国語科と理科で新聞を作製。発表会をしたり、廊下の壁など見やすい場所に張って、文化祭では保護者にも見てもらったりした。さらに、おかやま新聞コンクールにも出品した。

 実践を通し、生徒の新聞作りへの苦手意識がなくなり、作品のレベルが上がった。また、読む機会が増えて、新聞が身近な存在になっているようだ。自分の考えを書いたり、まとめたりすることにも抵抗感がなくなり、分かりやすく伝えることができるようになっている。一方で、実践できた教科や領域が限られていたことが課題だ。来年度以降いかにNIEを継続していくか、考えていきたい。

■県立勝山高・頃安 成彦教諭―職業とのつながり意識

 将来の進路を見据え、自ら課題を見つけて学習する「夢現(むげん)プロジェクト」とNIEをキャリア教育の二本柱とし、持続可能な体制の構築を目指した。

 夢現プロジェクトは社会的、職業的自立に必要な能力、態度の育成を目指し課題を研究して、年度末に発表会を開くが、興味本位の調べ学習の域を超えない取り組みもあった。課題設定の段階で、社会についての理解と課題意識が欠けていることに問題があると考え、克服の鍵としてNIEに取り組んだ。

 実践1年目から校内の3カ所に複数紙を置き日常的に新聞に触れられるようにした。1、2年生は朝に週1回「NIEタイム」を設け、生徒自身が選んだ記事について説明し合って感想を書いた。読む、話す、聞く、書くという一連の言語活動が短い時間でできた。またNIE推進委員を立ち上げ、新聞記者との座談会などをした。授業では国語、社会、商業での実践が活発だった。

 1年目から夢現プロジェクトの発表のレベルが上がり、自信を持った生徒は校外での発表会やワークショップに参加するなど成果が見えてきた。2年目は教員、生徒の主体的、自発的な取り組みが広がった。全学年で「NIEタイム」が行われ、推進委員が主導するようになった。

 NIEは学びと社会、職業とのつながりを生徒に意識させ、学習意欲を喚起する。今後は生徒が小学生に学習指導する場にも取り入れるなど、さまざまな立場の人に実践を広げたい。

■県立岡山南支援学校・吉田義則教諭―情報得る習慣身に付く

 本校は知的障害がある児童生徒を対象とした特別支援学校で、軽度から重度まで障害の程度もさまざまな子どもが通っている。NIEは高等部の生徒を対象に実践。生徒の能力に応じて新聞から情報を得る習慣を身に付け、社会事象に関心を向けてもらうことを狙いとした。

 朝の学習、朝の会を使い、新聞コラムの書き写しや教師が選んだ記事をまとめる学習で読む力・書く力が上がった。継続する中で、生徒に「自分で記事を選びたい」「自分が興味ある内容を他の人にも伝えたい」という気持ちが出てきたので、切り抜いた記事を壁に掲示するようにした。キャリア教育のイベントでは、インタビューや情報収集を行い、グループで壁新聞を作った。活動前は受け身的な姿勢や表現力の乏しさが課題だったが、自分で調べ表現する力を付けることにつながった。

 授業では消費税増税、天気と防災、選挙など実社会に関係する記事を活用。活字を読み理解するのが難しい生徒もいるが、記事のイラストや子ども新聞などを使い理解を深めた。この授業をきっかけに、投票に行ったり、気温差による東京五輪のマラソンコース変更の記事に興味を持ったりする生徒もいた。

 NIEによって、生徒は社会に関心を持つ大切さを実感したと思う。生徒たちから「新しい新聞はいつ届くのか」と声が上がるようになり、今では新聞の掲示も生徒自身で行っている。新聞の活用を継続していくことが今後の課題だ。

(2020年01月22日 17時31分 更新)

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