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米中の貿易合意 一時休戦も終結見通せず

 高い関税のかけ合いが続いてきた米国と中国の貿易協議が、ようやく「第1段階」の合意に達した。双方が内向きの都合からひとまず折り合った形だが、多くの難題が先送りされており、終結への道は依然険しい。

 合意内容は、中国が米国の農産物や工業製品などの輸入を2年間で2千億ドル(約22兆円)増やす。米国は、制裁関税対象の一部1200億ドル分への関税率を15%から半減する。引き下げは初めてだが、残る2500億ドル分については関税率25%を維持するとしている。

 協定には、合意事項の順守を検証する枠組みの設置も入っている。知的財産権の保護や技術移転強要の是正なども盛り込んだ。

 合意にこぎ着けた背景にはトランプ米大統領、中国の習近平国家主席ともに“一時休戦”したい事情があった。11月に大統領選を控えるトランプ氏は、米国産品の輸出拡大という国民にアピールする成果を早期に得ることを優先。一方の習氏も、貿易摩擦の激化による中国経済の減速に歯止めをかける必要に迫られていた。

 世界1、2位の経済大国同士の貿易摩擦は両国のみならず、世界経済に深刻な影を落としている。制裁と報復の応酬から歩み寄りに転じたことを歓迎したい。合意内容の着実な履行で次のステップにつなげてほしい。

 ただ、今後の展開を巡ってはなお波乱含みだ。中国による米国産品の輸入拡大は、現状から5割程度も増やすもので、専門家は非現実的な数値と指摘する。

 中国が合意内容を履行できずに米国が再び制裁関税を発動すれば、中国が反発を強めて対立の構図に逆戻りすることも考えられる。履行を果たすために、第三国からの輸入を減らすような事態を招かないか懸念される。

 トランプ氏が強い意欲を示している「第2段階」の交渉は、さらにハードルが高くなろう。最大の焦点は、自国企業への過剰な産業補助金や国有企業への優遇政策といった中国の構造問題である。トランプ政権は交渉の「本丸」と位置付け、第2段階交渉が合意すれば制裁関税を撤廃するとしている。

 これに対して習指導部は、国家体制や成長戦略の根幹に関わるとして抵抗を強め、長期戦の構えを崩していない。協議の難航は必至の状況だ。

 米中貿易摩擦の根底には、覇権争いで譲れぬ両国の思惑がある。しかし、高い制裁関税を振りかざし、対話より力ずくで相手国に譲歩させるトランプ流の手法は、同盟国も含めて自由貿易体制を脅かしており、看過できるものではない。一方、競争力を不当に高める中国に対しても国際的な批判は強い。

 今後の交渉を通じて両国は大局に立ち、健全な貿易ルールづくりや世界経済の進展に尽くすよう求めたい。

(2020年01月22日 08時00分 更新)

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