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通常国会開幕 政府は説明責任を果たせ

 通常国会が開幕した。安倍晋三首相は施政方針演説で、社会保障制度改革の実現などへの意気込みを強調したのをはじめ、憲法改正に向けた活発な議論を呼び掛けた。その一方で、「桜を見る会」の私物化疑惑など政治不信を招いている懸案については触れなかった。

 政治への信頼を回復し、山積する国内外の重要課題に対処することが強く求められている。政府は説明責任を果たすとともに、国会は徹底した論戦でチェック機能を十分に発揮することが欠かせない。

 安倍首相が演説で強調した一つが「全世代型社会保障制度」の実現である。現役世代の負担軽減として、75歳以上の医療費負担について一定所得以上の人は2割に引き上げることなどを掲げた。ただ、受診控えにつながりかねないだけに慎重な議論が要る。

 地方創生に関しては、東京から地方へ移住し起業や就業する若者の支援などを挙げた。地方を中心に人口減少が進む中、東京一極集中の是正が急がれるものの、昨年末にまとまった第2期の総合戦略では、是正時期を当初の2020年から24年度に先送りせざるを得なかった。成果は不十分であり、実効性ある施策が求められる。

 海上自衛隊の中東派遣を巡る問題も焦点となろう。政府は、防衛相の命令だけで実施できる防衛省設置法の「調査・研究」を根拠に派遣決定に踏み切った。

 だが、それでは国会が関与する余地がなく、政府の独断で自衛隊の海外派遣が歯止めなく広がる懸念は拭えない。派遣の妥当性や新法制定の必要性などについて国会で議論を尽くすことが不可欠だ。

 安倍首相が演説で政治不信を巡る問題に言及しなかったことは、国会軽視の姿勢の表れと断じざるを得ない。

 首相主催の桜を見る会では、多数の後援会関係者らが招待され、前夜の夕食会は相場より安い会費などに法令違反の疑いがある。その上、招待者名簿を廃棄し、管理簿に記載していなかった公文書管理法違反も判明した。明確な説明が必要だ。

 政府が進めるカジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業では、元内閣府副大臣が収賄容疑で逮捕された。中国企業側が元副大臣らに現金を提供したと供述し、IR事業の工作資金だった可能性が高いとされる。

 政府は20年代半ば開業のスケジュールを描き、準備を進める一方、立憲民主、国民民主など野党4党はカジノ営業を禁止するための法案を衆院に提出した。ギャンブル依存症の拡大など国民の懸念も根強い。疑惑を抱えたまま事業を進めることに、国民の十分な理解は得られまい。

 公選法違反の疑いが相次いで発覚した前閣僚らは、いまだ政治家としての説明責任を十分に果たしていない。任命責任のある安倍首相がどう取り組むかも問われよう。

(2020年01月21日 08時00分 更新)

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