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伊方原発差し止め 安全最優先への重い警鐘

 愛媛県伊方町の四国電力伊方原発3号機をめぐり、運転差し止めを求めた住民の仮処分が広島高裁で再び認められた。地震や火山のリスクを調査した四電と安全性に問題がないとした原子力規制委員会は、決定を重く受け止める必要がある。

 原発から50キロ圏内に住む山口県の住民が訴えていた。地震の揺れの大きさや、約130キロ離れた熊本県・阿蘇カルデラのリスク評価が妥当かどうかが焦点だった。

 裁判所の決定の根拠は、リスクに対する四電の調査や判断が甘すぎるということに尽きよう。

 原発がある佐多岬半島北岸部について、四電は海上音波探査により活断層は存在しないとし、活断層が敷地に極めて近い場合に行う地震動評価は必要ないとして行わなかった。だが高裁は、2キロ以内にある中央構造線が横ずれ断層である可能性は否定できず、調査が不十分だと指摘した。

 火山リスクについても、阿蘇カルデラが破局的噴火に至らない程度の噴火の規模を考慮すべきで、その場合の降下火砕物などの想定が過小だと断じた。

 そうした四電の調査や判断に対して、規制委が問題ないとしたことは誤りで不合理であると結論づけている。

 活断層などの調査が尽くされていないのなら運転中止はやむを得まい。安全をしっかり見直すのは当然だろう。

 四電は異議申し立てをする方針で、今後は広島高裁の別の裁判長による異議審が行われる。規制委も「適切に審査した」と反論している。同様に運転を禁じた2017年の広島高裁仮処分決定は異議審で取り消されており、判断が覆る可能性はある。

 しかし福島第1原発事故の後、各地の原発では再稼働や運転の禁止を求める住民らの訴えが次々と起こされている。このうち今回を含め5件が1度は訴えを認められた。

 事故前は住民側の負けが当たり前だったが、様変わりした。推進派の専門家の中には「科学的判断を司法は尊重すべきだ」との声もあるが、その行き着いた先が「安全神話の崩壊」であったことを忘れてはならない。住民と司法の厳しい目を政府と電力会社はもっと自覚してほしい。

 しかも同じ原発で2度も運転差し止めが命じられたのは伊方3号機だけだ。半島の付け根に立地するため事故の際の住民の孤立が懸念され、放射性物質による瀬戸内海の広域汚染も心配されている。

 災害想定の甘さを指摘した高裁の決定は、そうした重大な局面はあってはならないという警鐘であり、政府が再稼働のよりどころとする規制委の在り方に疑問符を投げかけるものとも言えよう。

 安倍政権は原発を重要なベースロード電源ととらえているが、思惑通りには進んでいない。安全でない原発はたたみ、脱原発依存のエネルギー政策へと転換したい。

(2020年01月19日 08時00分 更新)

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