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阪神大震災25年 「自分ごと」として備えを

 「全国の皆さんに伝えたいのは安全神話を信じるな、ということです」。阪神大震災の被災地、神戸市長田区を先月訪ね、震災の語り部として活動する野村勝さん(81)の話を聞いた。

 震災前、「神戸では地震は起きない」と多くの住民が思っていたという。周囲に驚かれながら、野村さんが築80年の自宅の耐震補強をしたのは震災の10年前だった。

 当時、野村さんは神戸市の消防職員。地震発生時は当直中で、現場に急行して消火活動を指揮した。自宅にいた妻と連絡が取れたのは4日後。自宅は傾いたが、補強のおかげで妻の命は助かった。

 震災後、復興に向けた地元のまちづくり協議会会長も務めるなど無我夢中で過ごしてきた。改めて感じるのは揺れへの備えの大切さだという。

 阪神大震災の発生から、きょうで25年になった。最大震度7の直下型地震により、老朽化した家屋や建物が次々に倒壊し、多くの人が下敷きになった。犠牲者は6400人を超え、死因の多くが圧死だった。

 阪神大震災以降、日本列島は地震の活動期に入ったとされる。それを実感する四半世紀だったといえるだろう。2011年の東日本大震災、16年の熊本地震、18年の北海道地震など、震度7の地震が頻発している。

 地震はいつ、どこで起きてもおかしくないと研究者は警鐘を鳴らす。だが、私たちは「自分ごと」として取り組んでいるだろうか。どこかに「自分が住む地域では大きな地震は起きない」というような安全神話はないか。

 岡山県内では長らく死者が出るような地震は起きていない。しかし、災害史を振り返ると、1946年の昭和南海地震では県南で震度6を記録し、住宅約4千戸が全半壊し、52人が犠牲になった。

 今後、高い確率で発生が予想される南海トラフ巨大地震や断層型地震により、岡山県内では最大震度6強が予想されている。立っていられず、はわないと動けないほどの揺れだ。耐震性の低い木造住宅は倒壊し、固定していない家具の多くが倒れるとされる。

 阪神大震災は多くの教訓を残した。被災者であふれた避難所の運営や住宅再建は課題となり、ボランティア活動が進む起点にもなった。ただ、そうした課題への対応以前に、まずは地震の揺れで命を落とさないことが大前提だ。

 81年に耐震基準が変わったため、それ以前に建てられた住宅は耐震診断が必要になる。住宅が新しくても家具が倒れ、下敷きになれば命にかかわる。家具の固定化を進めたい。就寝中の被災に備え、寝室の家具の配置を見直すことなども有効だろう。

 地震を避けることはできないが、対策で被害を小さくすることはできる。阪神大震災の犠牲者の無念を思いながら自分と家族の命を守るため、できる備えを点検したい。

(2020年01月17日 08時00分 更新)

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