山陽新聞デジタル|さんデジ

ゴーン被告会見 司法の場で主張すべきだ

 逃亡先でどんなに熱弁を振るっても、密出国を正当化することはできない。

 金融商品取引法違反の罪などで起訴され、海外渡航禁止などを条件に保釈中だった日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告が昨年末、無断で出国した。国籍のある中東レバノンへ逃亡し、8日、現地で記者会見した。

 日本の報道機関の大半を閉め出した会見は、さながら独演会のようだった。日本の司法制度を批判し、起訴された事件は日産幹部と検察による陰謀などと、従来の主張を繰り返した。保釈中に妻との接触が原則禁止されていたことが逃亡の理由とも述べた。

 しかし、どんな理由を並べても密出国は違法であり、許されるものではない。日本脱出の経緯についてゴーン被告は会見では口をつぐんだが、海外メディアや関係者によると、大型ケースに身を隠し、関西空港からプライベートジェット機で出国したようだ。複数の協力者による組織的支援があったとみられる。

 なぜ、前代未聞の逃亡を防げなかったのか。15億円という保釈保証金が没取されるのも、莫大(ばくだい)な資産を有するゴーン被告には大した問題ではなかったのだろう。日本での保釈中の監視態勢や出入国管理に問題があったのは確かである。逃亡の経緯を解明する捜査が急がれる。

 早ければ4月から始まる予定だった裁判の見通しは立たなくなった。日本政府は国際刑事警察機構(ICPO)を通じ、ゴーン被告を国際手配した。日本と犯罪人引渡条約を結んでいないレバノンが引き渡す可能性は低いとみられるが、日本政府は粘り強く交渉していかねばなるまい。

 会見で、ゴーン被告は自らが起訴された内容を一つずつ否定し、証拠もあると述べた。そうであれば裁判で正々堂々と主張すべきだ。このままでは真相解明は遠のくばかりである。

 ゴーン被告の逃亡により、日本の刑事司法制度があらためて海外から注目されることになった。否認すれば勾留が長引く「人質司法」にはかねて国内外から批判があった。取り調べに弁護人の立ち会いが許されないのも先進国の中では異例とされる。

 近年、日本でも保釈を認めるケースが増えており、ゴーン被告の保釈も改善に向けた動きの一つとみられていた。それだけに被告が逃亡した衝撃は大きいが、人権保障の観点から、保釈を認める流れを後退させるべきではない。

 ただ、国内ではほかにも保釈中の逃走事件が相次いでおり、対策強化が急がれる。法務省は法改正を法制審議会へ諮問する方向で検討している。刑務所から逃げた場合などに限られる逃走罪を保釈中の被告にも拡大することや、米国などで採用されている衛星利用測位システム(GPS)の装着なども検討課題となりそうだ。人権への配慮も含め、慎重に議論を進めたい。

(2020年01月11日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ