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米・イラン対立 自制しつつ対話の道探れ

 イラン革命防衛隊の部隊司令官が米軍に殺害されたことへの報復として、イランが米軍が駐留する基地へのミサイル攻撃に踏み切った軍事対立で、トランプ米大統領がきのう、軍事的報復は行わないことを表明した。報復の連鎖で全面衝突に突入する危機はひとまず回避されたとみていい。双方が自制し、事態を沈静化させるよう望みたい。

 トランプ政権がイラン核合意から一方的に離脱し、経済制裁に乗りだしたことに端を発する対立はその後、軍事衝突に発展していた。空爆などで双方に犠牲者を出し、昨年末にはイラクにある米大使館が抗議活動の際に襲撃され、施設の一部が破壊された。

 年明け早々には、イランの対外工作を仕切る部隊を率いたソレイマニ司令官を米国が殺害。イランの国民的英雄ともされる人物の死で、対立は頂点に達していた。

 国際社会の懸念をよそに、司令官殺害という過激な選択で状況を悪化させたトランプ氏の責任は重い。だが今回、ぎりぎりのところで自制し、事態の泥沼化を回避した判断は評価できよう。

 その決断の背景には、「米国第一」を掲げて中東からの米軍撤退・縮小を唱えてきたトランプ氏が、中東で新たな戦争に踏み切れば、11月の大統領選で岩盤支持層の離反を招きかねないと判断した可能性がある。

 一方のイランも、軍事力で圧倒される米国との本格的な衝突は望まないのが本音だろう。イラン側は、米軍基地への攻撃で米兵80人を殺害したと国内向けに成果を誇示しているが、米側は死傷者はいないとしており、全面対決に至らぬ程度の攻撃にとどめたとの見方は強い。事態をエスカレートさせたくない双方の思惑が一致したとみられる。

 国際社会では、両国の対立激化を受けて原油の安定供給に懸念が高まり、一時は原油価格が急騰した。日本としても、依存度の高い中東産原油の調達に支障が出るなど大きな影響を受けかねなかった。

 ただ、当面の危機を避けられたとしても、対立の原点であるイランの核開発問題に解決の見通しがあるわけではない。イラン政府は、欧米など6カ国と結んだ核合意から逸脱する措置の第5弾として、無制限にウラン濃縮を進めると発表した。兵器級に近づく20%以上まで濃縮度を高める恐れもある。イランは段階的な逸脱はこれが最後としており、次は合意自体から離脱することも懸念される。

 イランの核開発に歯止めをかけてきた合意が崩壊すれば、近隣諸国が核兵器の脅威にさらされかねず、世界は新たな火種を抱え込む。

 米側はイラン産原油の禁輸に加え、新たな経済制裁で圧力をかける方針も示した。緊張緩和に向けて両国が自制し、国際社会は協調して糸口を探ることが求められる。双方との友好関係を維持する日本の役割も問われよう。

(2020年01月10日 08時00分 更新)

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