山陽新聞デジタル|さんデジ

農水産物の輸出 産地活性化へ官民連携を

 農林水産物・食品の輸出額について、2019年に年間1兆円まで増やす政府目標の達成が極めて困難な状況だ。目標に届くには前年比10%超の伸びが必要だが、これまでにまとまっている昨年1~10月の実績は前年同期比0・8%の微増にとどまっている。主力のホタテの不漁など水産物の落ち込みが響いた。

 環太平洋連携協定(TPP)や日米貿易協定の発効で輸入品の流入が増える中、農水産物の輸出はより重要となっている。20年度には輸出拡大の司令塔となる新組織が発足する予定だ。新たな体制を弾みに行政、企業、産地など官民が連携を深め、一層の輸出拡大につなげたい。

 農水産物の輸出は安倍政権が掲げる成長戦略の一環で、海外での和食ブームなどを追い風に18年は9068億円まで拡大した。しかし、19年は10月までの累計が7396億円となっており、伸びが鈍化している。

 国内では農家の高齢化が進み、人口減による需要の衰退も懸念されている。輸出を増やすことは、生産者の意欲を高め、産地の活性化を図る上で意義が大きいといえよう。

 農水産物輸出を巡っては、品目ごとに相手国との間で行う交渉は農林水産省が行う一方、輸出の際に必要となる食品衛生管理の国際基準「HACCP(ハサップ)」の審査は厚生労働省が担当。実務が省庁間にまたがり、迅速な対応が難しくなっている。

 農水省に設ける新組織は、省庁間の壁を取り払って輸出手続きを迅速化するほか、東京電力福島第1原発事故に伴う輸入規制などの撤廃に向けた交渉も一元的に行う。輸出促進の工程表を作り、進(しん)捗(ちょく)も管理する。相手国の市場動向や要望に適切に対応できるよう、機動的で小回りの利く組織とすることが求められる。

 また政府は、シャインマスカットなどの新品種や和牛の受精卵などが海外に不正に持ち出されるのを防ぐため、関連法案も整備する。日本産ブランドを守るための取り組みも急ぎたい。

 岡山県も県産品の輸出拡大に力を入れている。ピオーネなどのブドウや桃、コメなどが輸出されており、桃とブドウを合わせた輸出額は年間8億円前後に上る。

 台湾、香港、シンガポールの3カ国・地域を重点市場として位置付け、現地の商業施設でのPRなどを展開している。昨年はJA全農おかやま(岡山市)と連携し、低温保存した冷蔵シャインマスカットを通常より遅い12月まで出荷する取り組みを本格的に始めた。品質の高さが評価されたという。

 近年増加している外国人観光客向けに、会員制交流サイト(SNS)を通じた情報発信も強化する方針だ。県は23年に桃とブドウの輸出額を11億円に伸ばすことを目指している。県産品のブランドをさらに高め、産地の成長力につなげてほしい。

(2020年01月09日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ