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国際情勢 分断と対立への歯止めを

 2020年の国際社会は年明け早々、中東情勢が一気にきな臭くなってきた。米軍の空爆で、イランの国民的英雄とされる革命防衛隊司令官が殺害された。トランプ米大統領は、自国民への攻撃計画に対する自衛措置だと正当性を強調するが、危険を増す無謀な挑発と言えよう。

 これに対し、イランの最高指導者ハメネイ師は「容赦ない報復」を表明。イラン政府は、15年に欧米など6カ国と結んだ核合意から逸脱する第5弾の措置として、無制限にウラン濃縮を進める方針を示した。さらには軍事行動も選択肢に据えており、米国も兵士の増派や対抗措置などを表明して一触即発の様相を呈している。

 トランプ政権による一方的なイラン核合意離脱と経済制裁再開に端を発した両国の対立は、危険水域に入ったと言えよう。双方の自制を強く求めたい。日本政府は中東近海に海上自衛隊を派遣するが、再考が必要ではないか。

 北朝鮮の非核化問題を巡っては、米朝協議が行き詰まり状態にある。軍事的脅威を前面に出して危機感をあおり、米国に経済制裁の譲歩を迫る金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の今後の出方は予断を許さない。

 米国とロシアの間では、中距離核戦力(INF)廃棄条約が昨年8月に失効し、両国は武器開発競争の様相を呈している。今年は核拡散防止条約(NPT)が発効して50年の節目であり、運用状況を5年に1度議論する再検討会議が開かれる。核軍縮へ成果が得られるか、存在意義が問われよう。

 台頭した中国と米国の覇権争いは、お互いが高関税をかけ合う貿易摩擦を巡る協議が第1段階の合意に至ったものの、まだまだ溝は深い。他にも人権問題や南シナ海の安全保障問題など懸案は多岐にわたる。緊張が続く香港情勢も気掛かりである。

 こうしたさまざまな対立の中心にいるのがトランプ氏である。「米国第一主義」を掲げた型破りな政治手法は国内外に分断と対立を生み、民主主義が揺らいでいる。

 トランプ氏が再選を目指す今秋の米大統領選は米国や国際社会の行方を左右する重要な選択の場だ。有権者の審判がどう出るか注目される。トランプ氏が支持層にアピールするため一段と独善的な政治や、外交圧力を強めることが心配される。

 米国に限らず世界に自国第一主義や強圧的な政治がはびこり、支持を得ている風潮がある。だが、地球温暖化対策など単独では困難な課題は多く、その弊害は自国にも跳ね返る。支持の背景には格差拡大などへの不満の蓄積が指摘される。そうした原因の改善に粘り強く努め、内向きから協調路線へと軌道を改めていくよう求めたい。

(2020年01月07日 08時00分 更新)

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