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外交・安全保障 問われる米中との距離感

 通算在職日数が歴代トップとなった安倍晋三首相は、外交面でも、2012年の第2次内閣発足以来の外国訪問が歴代首相として最多の80回を数えた。積極的な外遊は「戦後外交の総決算」を掲げる政権の姿勢の表れと言える。

 だが今年は、山積する課題への対処を迫られる正念場となろう。世界は自国第一主義が幅を利かせ、情勢の不透明さは増している。特に米国と中国の二大大国が経済や安全保障面で激しく覇権争いを続ける中、日本としては両国との距離感を測りつつ、国際社会でいかに安定した足場を築くかが問われる。

 同盟国の米国とは日米安全保障条約改定から60年を迎える。その条約を巡ってトランプ大統領は「不公平な合意だ」などと不満を表明し、在日米軍の駐留経費負担(思いやり予算)の増額を求めている。1日には米国産農産物の関税が下がる日米貿易協定が発効したが、貿易摩擦の火種が残る状況には変わりない。

 米国は11月に大統領選を控えており、再選を目指すトランプ氏は支持者受けする成果を求める傾向を強めている。その思惑と圧力に振り回されることなく、アジア太平洋地域の安定にとっての日米同盟の重要性と国際協調主義を丁寧に説いていくことが求められる。

 一方、日中関係については、対立から改善へとかじを切った。今春には習近平国家主席が国賓として来日する。

 だが中国は沖縄県・尖閣諸島の領有権を主張し、公船を日本領海に侵入させ続けている。香港情勢や少数民族ウイグル族弾圧問題に対する国際社会の視線も厳しい。国賓として招くことで日本がこれらの問題を追認したと受け取られないことが重要である。

 日韓関係は国交正常化以来「最悪」とされてきた局面を脱することができるかが焦点となる。元徴用工への損害賠償の支払いを日本企業に命じた韓国最高裁の判決を発端に、昨年は日本による半導体材料の韓国への輸出規制強化や、韓国による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)破棄通告が行われる事態となった。

 安倍首相と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領は昨年末、1年3カ月ぶりの会談にこぎ着けたものの、懸案解決への着地点は見えていない。関係改善の機会を逃さず、地道に対話を重ねてほしい。

 北朝鮮を巡っては、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験の再開を示唆した。踏み切れば情勢は一気に緊迫化しかねない。日米韓の連携を軸に国際社会が協調し、北朝鮮に自制を求めねばならない。手詰まり状態が続く日本人拉致問題も、解決に向けた糸口を粘り強く探ってもらいたい。

(2020年01月05日 08時00分 更新)

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