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地方の未来 「ローカル」こそが面白い

 令和となって最初の年明けを迎えました。いよいよ東京五輪・パラリンピックが幕を開けます。えとは「子(ね)」、ネズミ。多くの子孫を残すことから相場の格言で子年は「繁栄」するとされます。

 ただ、現実は難題ばかり。少子高齢化、人口減少、東京一極集中と地方の衰退…。わが国はこの先、ずっと課題に向き合っていかねばなりません。一方で、インターネットが人と人の距離を縮め、人工知能(AI)や自動運転などの科学技術で克服可能なことも広がっています。

 「ローカル」であることの意味や価値がいま、再発見されています。足元にはきっと宝があるはずで、大切なのはその魅力をどう生かし、自立していくかでしょう。地方をもっと面白がる前向きな1年にしたいものです。

ベンチャー増加

 

 自治体や民間が連携し、地方での起業や新規事業を支援する「ローカルベンチャー」が広まっています。先進地の一つ、人口約1500人の岡山県西粟倉村には年千人が視察に訪れます。

 平成の大合併を拒んだ村は2009年から「百年の森林(もり)構想」による森林資源の活用などを進め、この10年で雇用が200人増えました。中学生以下の子どもは11年を底に増加に転じています。

 地域の活力の大きな力になっているのが「Iターン」の移住者。現在約140人。新住民を中心に林業・木工関連や廃校跡のレストラン、子ども向けの帽子屋など34のベンチャーが誕生しました。

 若者が地方を目指す田園回帰は追い風でしょう。でも、生半可な気持ちではうまくいかず、地域にも溶け込めません。そこで村が15年から始めたのが「ローカルベンチャースクール」。事業計画を募集し、合格者に地元の資源や人脈の紹介、専門家のアドバイスなどの支援を行います。地域おこし協力隊制度などを活用し、3年かけて起業を目指します。

 計画がまだ固まっていない人には1年間研究員として採用する「ローカルライフ・ラボ」があり、よりハードルを低くしています。

自己実現を応援

 

 旗振り役の上山隆浩・地域創生特任参事(59)は「大事なのは、その事業プランが本当に自分がやりたいことなのかどうか。スクールではそこを徹底して突き詰める」と言います。あくまで希望者の自己実現を応援し、移住や定住に執着はしません。

 スクール運営など実際の支援はやはりローカルベンチャーの「エーゼロ」(同所)が情報発信とともに担います。官民協働で外からの風を村に引き入れ、「多様性」という豊かな彩りが生まれました。

 村が全国の自治体と16年につくったローカルベンチャー協議会(10市町村)は今後、他の自治体へもノウハウ提供などを目指すそうです。

 外部や地元住民を問わず、地方でチャレンジできる仕組みづくりを競い合う時代かもしれません。地域の長所を生かし身の丈にあった事業を立ち上げる。経済やエネルギーの地産地消を目指す。そうした“地域発”の動きがますます重要となるでしょう。

きらり光る資源

 

 移住支援のNPO法人による18年の希望先ランキングで岡山県は、上位から21位以下のランク外に急落しました。

 昨年12月に閣議決定した第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(20~24年度)は、地方と強いつながりを持つ「関係人口」の拡大を盛り込みました。移住推進策とともに、こうした応援団を増やすことも必要です。

 地方にいても、意欲とアイデアがあればネットを通じて全国や海外とつながり、人やお金を呼び込めます。夢を実現するため資金調達を呼び掛ける「クラウドファンディング」も盛んになりました。

 国を持続可能にしていくには、一極集中から多極集中、地方分散型へと転換しなければいけません。地域にはきらりと光る自然や歴史資源、適度な規模のスケール感で顔の見える人間関係があります。地方を面白いと思う人材が育ち、それを応援していく社会が求められています。

(2020年01月01日 08時00分 更新)

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