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出生数86万人 少子化対策を総点検せよ

 今年生まれた赤ちゃんが86万4千人となることが、厚生労働省の推計で分かった。統計がある1899年以降で最も少なく、30年前の平成元年より約3割少ない。

 2年前に政府が出した長期推計では87万人を割り込むのは2021年と見込まれていたが、2年早くこれを下回った。少子化のスピードは想定以上だ。これまでの論点や対策に何が足らなかったのかを総点検し、根本から立て直さなければならない。

 出生数が急減した主な要因は、親となる年代の女性の大幅な減少である。出産をする人が多い25~39歳は毎年約20万~30万人ずつ減っており、未婚、晩婚化や第1子出産時の高齢化も進んでいる。出生数が長期的に減り続けることは避けられまい。

 厚労省は「令和婚」となる5月に結婚が集中した結果、出産が先送りにされたなどと見解を示したが楽観すぎないか。内閣府が20~59歳の男女を対象とした昨年の調査では、6割以上が少子化対策が「質・量ともに十分でない」と答えている。結婚や妊娠、子育てに温かい社会の実現に向かっていると思わない人も7割以上いた。

 結婚や出産をする、しない、いつする、といった個人の自由な選択は尊重されなければならない。だが、お金の不安などを理由に結婚や出産を諦めざるを得ない人、ためらう人が少なくない現状は変えていくべきだ。

 政府は仕事と育児を両立しやすい社会を目指し、待機児童解消のための保育所整備、幼児教育・保育の無償化などを進めてきた。来年度からは未婚のひとり親の税負担を軽くする制度が始まる。出産後の母親や乳児への「産後ケア事業」を自治体の努力義務とする改正母子保健法も成立した。こうした子育て支援の強化は歓迎できる。

 ただ子どものいる家庭中心の施策だけでは十分とは言えない。収入や立場が不安定な非正規雇用で働く人の数は増え続け、総務省の労働力調査によると今年10月時点で労働者の38・4%。別の統計では、収入の低い人ほど非婚率が高い傾向がある。今年結婚したカップルが昨年より約3千組減り、戦後最少だったことは見逃せない。

 若い世代が安定的な収入を得られるような就労支援、待遇改善が急がれる。男性の育休取得の推進や、出産した女性が仕事や学業に戻りやすい、望めば第2子、第3子を持ちやすい環境づくりにも官民挙げて取り組みたい。長時間労働の見直しを含め職場の意識改革が重要だ。ひとり親世帯などの「貧困の連鎖」を断ち切る対策も必要だろう。

 今回の推計では死亡数から出生数を引いた人口の自然減も過去最多の51万2千人に上った。1年で倉敷市より多い人口が消えるに等しい。今後は人口減を前提に持続可能な社会をつくっていく覚悟と発想の転換も求められる。

(2019年12月30日 08時00分 更新)

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