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岡山市中心部の千日前商店街で新…

 岡山市中心部の千日前商店街で新市民会館の移転新築(2022年予定)に向けた整備が進む。商店の名を記した看板も、アーケードの撤去とともに姿を消した。映画館のつり看板もその一つだ▼「ロードショー70mmOS―テアトル岡山」のように店舗名が書かれ、夜は内部の蛍光灯の光に浮かび上がった。映画の余韻に浸りながら見上げた人もいただろう▼商店街はかつて岡山県内最大の娯楽街として栄えた。1912(明治45)年に映画館・帝国館が開館。大正時代には金馬館、若玉館が誕生し、映画館通りになっていく。45年の岡山空襲による焼失後もたちまち復活したが、娯楽の多様化などで客離れが進んだ▼決定的な打撃はシネコンの台頭だ。2000年代に入って閉館が相次いだ。跡地の多くは駐車場になり、ぽつんと残ったつり看板が往時のにぎわいを伝えるのみだった▼「小さな看板だが、地域の歴史を語る大切な遺産だ」と映画史研究家の世良利和さん(岡山市)は言う。同じ思いだったのだろう。千日前商店街振興組合は、このつり看板を廃棄せずに保管していた。ただ、今後どうするかは未定だという▼この商店街には傑作「飢餓海峡」で知られる内田吐夢監督の生誕地もある。案内板のようなものがいまだにないのは残念だ。忘れ去るには惜しい土地の記憶がここにはある。

(2019年12月15日 08時00分 更新)

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