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香港人権法成立 民主化への抑圧回避せよ

 トランプ米大統領は、香港の自治や市民の人権などを支援する「香港人権・民主主義法案」に署名し、同法が成立した。中国政府は「内政干渉だ」と強く反発し、2日には米軍艦の香港寄港拒否などの報復措置を発表した。さらなる米中対立が心配される。

 米国は、中国が香港に認めた高度な自治を保障する「一国二制度」に基づき、関税やビザの発給などで香港を中国本土より優遇している。今回成立した人権法は、中国が一国二制度を守っているかどうかを米政府が毎年検証し、議会に報告するよう義務付けるものである。

 具体的には、香港での集会や言論の自由、司法の独立が機能しているか、中国政府によって自治が侵されていないかなどを検証する。人権侵害に関与した者には、米国入国拒否や資産凍結の制裁を科すことが可能になる。

 人権法案は共和、民主両党の超党派議員が提出し、上院で全会一致、下院でも圧倒的多数の賛成でそれぞれ可決していた。

 香港では「逃亡犯条例」改正案に端を発した香港政府の警官隊による強圧的な締め付けと、民主化を求めるデモ隊の衝突が大きな混乱を招き、現在も続いている。人権法の成立は、そうした現状への懸念と、民主化を求める香港市民を応援する米議会挙げての強い決意表明といえよう。

 先ごろ行われた香港区議会(地方議会)選挙では、民主派が8割超の議席を獲得して圧勝。選挙前に7割の議席を占めていた親中派と逆転した。投票率も71・2%と返還後最高となり、刷新を求める幅広い市民の憤りの大きさを感じさせた。

 人権法は、そうした動きを一層後押しするものとなろう。だが、香港市民の歓迎ムードとは裏腹にトランプ氏の言動は慎重だ。「大統領の外交権限」を強調し、法律を骨抜きにするとも受け取られる発言をしている。どこまで実効性が伴うか定かではない。

 来年の大統領選をにらむトランプ氏は、中国との貿易交渉で成果を得るため習近平国家主席を刺激する香港情勢への言及は避けたいのが本音だろう。だが、法案は圧倒的多数で議会を通過しており、拒否権を発動しても再採決で成立する見通しのため署名せざるを得なかった。

 中国は「米側の誤った措置に断固として報復する」とし、貿易協議を含む重要分野の協力に影響が出ることを示唆していた。今回打ち出した措置は寄港拒否のほか、香港の抗議活動を支持した米国の非政府組織(NGO)も対象にするという。米中の対立激化は両国はもちろん、国際社会にも深刻な影響を及ぼす。冷静な対応が望まれる。

 香港政府や中国政府には、区議会選の結果や国際世論などを踏まえ、香港の一国二制度を尊重するよう求めたい。日本をはじめ国際社会も一層注視しなければならない。

(2019年12月03日 08時00分 更新)

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