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軍事情報協定 失効は安全保障揺るがす

 対立から抜け出す糸口をつかめぬまま、タイムリミットが迫ってきた。

 韓国が破棄を打ち出している日韓両国間の軍事情報包括保護協定(GSOMIA=ジーソミア)を巡り、米国を交えた3カ国の防衛相会談が開催された。エスパー米国防長官は韓国に協定破棄の方針を転換するよう促したが、協議は平行線をたどった。このまま打開策を見いだせなければ協定は23日午前0時で失効する。きしみが目立つ両国関係は一層深刻さを増そう。

 協定は、軍事上の機密情報を提供し合う際に、第三国への漏えいを防ぐために結ぶ。対象は軍事技術や暗号情報など広範囲に及ぶ。日韓の間では2016年に締結された。

 河野太郎防衛相らが出席してタイのバンコクで行われた3カ国会談は、東アジアの安全保障協力体制の亀裂に危機感を強めた米国が、仲介役として加わったものだ。韓国側は、協定破棄を決めたのは日本が打ち出した韓国向けの輸出規制の強化が原因だとして、日本側がまず対応すべきだとの主張を繰り返した。

 日本側は、輸出規制と協定とは次元が異なる問題だと反論しており、立場は食い違ったままだ。

 仮に協定が失効すれば、両国が得た軍事情報は米国を介してしかやり取りできなくなり、迅速で綿密な情報共有に支障をきたすことが予想される。短距離弾道ミサイルの発射を繰り返している北朝鮮などを利するだけだ、と今後を危ぶむ声は多い。

 かつて、協定締結目前になって韓国側が世論の反発で署名を延期し、4年後に署名にこぎつけた経緯を見ても、ここで失効すれば再締結は困難だとの見方も強い。

 韓国内の世論は破棄一辺倒というわけではない。米韓同盟を重視する保守系は協定維持を求めている。歴史問題などを踏まえて日本に厳しい姿勢を取る革新系は破棄を要求し、世論調査では破棄を支持する意見が上回っている。

 文在寅(ムンジェイン)政権が協定の存在意義を理解していないとは思えないものの、軟化しづらい事情もあるようだ。支持率が低下し、来年4月には総選挙も控えて世論の反発を恐れていることが挙げられる。

 両国の対立は昨年10月、元徴用工訴訟で日本企業に賠償が命じられたことに端を発する。この間、外交による解決が望まれたが歩み寄りは見られなかった。その影響は政治分野にとどまらず、日本への旅行の自粛や民間交流イベントの中止などに余波を広げた。1965年の国交正常化以降最悪ともされる現状は極めて深刻である。

 残された時間は少ないが、韓国には東アジア地域の安定を図るという大局に立って、日米韓3カ国の連携維持に向けた冷静な判断を求めたい。日本としても、最後まで協定の破棄撤回に向けて粘り強く働き掛けを続け、状況の打開につなげる努力が必要だ。

(2019年11月20日 08時00分 更新)

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