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温暖化対策 「脱炭素」へ歩み緩めるな

 地球温暖化に関係する異常気象や自然災害が、一段と深刻さを増してきた。危機感を強める研究者らによって警鐘を鳴らす論文などが相次いで発表されている。

 こうした中で、温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」が来年から本格始動する。しかし、トランプ米政権は今月上旬、国連に協定からの離脱を正式通告した。実際の脱退は1年後だが、築いてきた国際協調を乱すもので、無責任と言わざるを得ない。

 熱波や洪水、干ばつなどが世界各地で相次ぎ、「気候危機」と呼ばれるまでになった。日本でも大型台風や豪雨などが繰り返し、甚大な被害を出している。

 先ごろ、米オレゴン州立大の研究者が「人類は『気候の緊急事態』に直面している」との論文をまとめた。過去40年間の人間活動の拡大状況と地球環境の変化を照らし合わせ、人間が環境に及ぼす影響の急激な拡大を浮き上がらせて早急な行動を促している。1万人を超える研究者が賛同の署名を寄せ、専門家の懸念の切実さがうかがえる。

 英国の医学誌や欧米の大学などのチームは、温暖化が及ぼす子どもの健康への影響を報告書で発表した。食料の減少は乳幼児の栄養不良を拡大し、化石燃料の燃焼に伴う大気汚染は呼吸器などの発達段階にある子どもを害すると指摘。パリ協定下で各国が対策を強めるよう訴えている。

 パリ協定は2016年11月に発効し、約190カ国・地域が加入している。産業革命前からの気温上昇を2度未満、できれば1・5度に抑えることなどを目指す。

 トランプ大統領は「米国に経済的な不利益がある」として17年に離脱の意向を表明し、通告が可能な発効後3年を経て届け出た。背景にはパリ協定実現を後押ししたオバマ前大統領への対抗心や、来年の大統領選に向けた公約実施で、石炭業界などの支持固めを図りたい思惑もあろう。

 人間の行動が引き起こしてきた温暖化という難題は、世界が結束して真剣に挑まなければ展望は開けない。にもかかわらず、中国に次ぐ世界2位の排出大国のリーダーが人類の脅威への対応より、自らの利益を優先する身勝手さに強い疑念を覚える。

 実際の離脱は大統領選の直後となる。米国内には離脱に反対する勢力も多い。パリ協定の是非を選挙の争点として議論を高めてほしい。

 今後に向けて大切なのは、米国に対する離脱撤回の働きかけとともに、他の参加国が結束して「脱炭素社会」への歩みを緩めず、その道を確かなものにしていくことだ。世界に広がる若者たちの抗議行動に込められた思いにも応えなければならない。

 来月スペインで開かれる国連気候変動枠組み条約第25回締約国会議(COP25)の重要性が一段と高まろう。主要排出国である日本の果たすべき責任も重い。

(2019年11月19日 08時00分 更新)

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