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山あいの道路がアスファルトから…

 山あいの道路がアスファルトから土に変わり、軒を連ねるかやぶき屋根が見えてきた。その数30棟余り。時代劇映画の中に迷い込んだような集落のたたずまいに息をのむ▼東京都心から車で4時間ほど。江戸期の宿場町の姿を伝える福島県下郷町の大内宿を訪ねた。本陣跡や石積みの水路も風情を醸し、年間約80万人を集客する県内屈指の観光地である▼近代化から置き去りにされた谷間の寒村に光が差したのは昭和40年代だった。研究者から“奇跡の村”保存の声が上がり、個人旅行ブームを追い風に観光客が押し掛けた。重要伝統的建造物群保存地区に選定(1981年)され、平成に入ると訪問者はさらに増えた。地域再生の成功例と言えるだろう▼それでも住民には不安があるという。観光客はピーク時から2割減り、観光バスは半減。周囲は限界集落化が進んでいる。町教委が今春発行した保存対策調査報告書は「住民全体による議論の方向性の共有」を強調する▼報告書作成メンバーの一人で岡山理科大工学部の八百板季穂准教授は「『歩いて見る』だけでなく、固有の文化や資源に触れられる新たな価値の提供が欠かせない」と提案する▼観光の質の変革は、景観を売りにするどの観光地にも当てはまることだろう。伝建地区指定から間もなく40年。大内宿の次なる歩みを見守りたい。

(2019年11月18日 08時00分 更新)

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