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梅毒の患者増 警戒と啓発活動の強化を

 性行為などでうつる梅毒の感染拡大が止まらない。今年に入って全国の医療機関から届け出があった患者数は10月27日までに5467人に達し、3年連続で5千人を超えた。これ以上の増加を防ぐには国や自治体による啓発活動の強化が欠かせない。

 都道府県別では東京、大阪など都市圏を中心に広がっており、岡山161人、広島113人、香川41人。ただ、人口100万人当たりの報告数でみると岡山は東京に次ぎ全国2番目、香川は6番目に多い。警戒が必要だ。

 患者は1990年代以降、年間500~700人台を推移していた。ところが2010年ごろから急増し、18年はほぼ半世紀ぶりに7千人を超えた。19年も同様のペースで増えている。国立感染症研究所によると、その約7割が男性だが、20代を中心に若い女性の増加が目立っている。

 梅毒は梅毒トレポネーマという細菌が原因で起こり、性的接触によって感染する。3週間ほどで陰部や口にしこりができ、約3カ月後には手足などに赤い発疹が出る。軽く治まっても菌は全身に広がり、放置すると何年もしてから心臓や脳に合併症を引き起こすこともある。妊娠中にかかると赤ちゃんが亡くなる可能性がある。

 抗菌薬を適切に服用すれば治せるが、症状が消えたり再発したりを繰り返すのがやっかいだ。感染に気付かないまま他人にうつす人や、せっかく治療しても完治する前に服薬をやめてしまう人も少なくないという。

 現役医師の多くが梅毒を診た経験がないため、見逃すリスクが高いとも指摘される。梅毒には「偽装の達人」の異名があり、視力低下、頭痛、関節炎などおよそ性感染症とは結び付かないさまざまな症状があるからだ。兆候を見逃さず、特に妊娠中やその可能性のある女性は用心したい。

 流行を受け、厚生労働省は各自治体に発生動向の調査や分析の強化を促している。今年1月には届け出票に患者の妊娠の有無、直近6カ月の性風俗産業の従事歴など確認事項を加え、全国的な実態把握に乗り出した。実効性ある対策につなげてほしい。

 岡山市保健所は国に先駆け、10年から独自調査を行っている。届け出医の診療科、患者の職業などを詳しく聞き取った結果、異性間で感染した男性のうち約7割が数カ月以内に風俗店を利用▽女性の25%が性産業の従事者▽男女とも特定のパートナーを持つ割合が増え、女性は6割以上がパートナー間感染―といったことが分かっている。

 治療薬の進歩もあり梅毒は「過去の病気」と思われがちだが、認識を改めなくてはならないだろう。厚労省はコンドーム使用による予防と、各自治体が実施する無料検査の受診を呼び掛けている。パートナー検査や早期受診、治療の機運を盛り上げて流行を抑え込みたい。

(2019年11月17日 08時00分 更新)

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