山陽新聞デジタル|さんデジ

教員の変形労働制 過重労働是正になるのか

 公立校の教員の勤務時間を年単位で調整する変形労働時間制を導入できるようにする法案が今国会で審議されている。教員の働き方改革の一環だが、長時間労働の是正につながらないとの批判がある。十分な議論が必要だ。

 教職員給与特別措置法(給特法)改正案で、柱となる変形労働時間制は2021年4月から各自治体の判断で導入できるようにする。勤務の柔軟性を高め、例えば、繁忙期の4月などに所定の勤務時間を週3時間増やし、代わりに8月の休日を5日増やすことなどが想定される。教職志望者が減る中、夏休み中の長期休暇を魅力として打ち出せると文部科学省は説明する。

 しかし、学校現場や教育分野の研究者からはむしろ学期中の長時間労働を追認することになるとの指摘が出ている。変形労働時間制で表向きの残業時間が減って働き方改革が進まなくなることや、夏休み中も休める保証がないなど多くの懸念があるという。先月、現職教員や過労死した教員の遺族らが法案撤回を求める約3万3千人分の署名を文科省に提出している。

 遺族の1人は今月、衆院文部科学委員会で参考人として意見を述べた。教員の過労死は5、6月に目立つと指摘し、「夏休みまでもたない。休息も取れないのに、繁忙期に勤務時間が長くなれば過労死が増える」と訴えた。

 夏休みなどに休暇を取りやすくすること自体には現職教員からも賛同の声が上がる。ただ、これは現行制度の下でも可能で、既に多くの自治体が夏休み中に教員の日直などを置かない学校閉庁日を設定している。岐阜市のように昨年、夏休み中に16日間連続の閉庁日を設けた例もある。

 喫緊の課題は日常的な教員の疲弊だろう。文科省の16年度の勤務実態調査では公立小教員の3割、公立中教員の6割の残業が「過労死ライン」とされる月80時間を超えていた。教員は給与月額の4%相当が上乗せされる代わりに残業手当は支給されない。残業はあくまで「自主的な活動」ととらえられ、長時間労働を常態化させてきた。

 中教審は今年1月の答申で、これまで規定のなかった教員の残業時間の上限について原則月45時間とする指針を打ち出した。今回の法案には指針を法的に位置付ける条文も盛り込まれたが、現状を踏まえれば、達成のハードルは極めて高い。

 萩生田光一文科相は変形労働時間制について、導入で教員の業務が減るわけではないと認めた上で「まず業務削減をした上で導入を検討する流れになる」と説明している。そうであれば、業務削減の道筋を示すのが先だろう。

 教員の過重負担を軽減するためには、教員定数や教員の支援態勢を見直すことが欠かせない。残業手当のない現行の給与制度についても再点検すべきではないか。国会で根本的な議論を求めたい。

(2019年11月16日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ