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秋の星が寂しいのは、冬の夜空の…

 秋の星が寂しいのは、冬の夜空の乱舞のため準備するからだと天文家で随筆家だった故野尻抱影はいう。「やがてペルセウスの羽の生えた靴先に、プレヤデス星団が真珠の房を懸ければ…冬の幕が静かに巻き上げられる」(「野尻抱影 星は周る」平凡社)▼真珠に例えたのは「すばる」。晩秋の今は夜更けにオリオンも東の空に上がってくる。かなたを仰ぎ見て、天空ショーを待ち焦がれる人もいるだろう▼ただ宇宙に存在するのは星々だけではない。地球の軌道上には4千機以上の人工衛星がある。さらに寿命を迎えたその破片やロケットの残骸がごみと化し、直径10センチ以上だけで約2万個が周回するというから驚きだ▼これらは猛スピードで衝突すると大変な破壊力となる。映画「ゼロ・グラビティ」(2013年)は上空60万メートルで起きたスペースシャトルとの衝突を描いた。大破し、宇宙飛行士が危機に陥る。破片は他国が破壊した衛星のものだった▼映画の世界が現実味を帯びるのは今や宇宙が軍拡競争の舞台だからである。米国や中国、ロシアなどが衛星を標的とする攻撃兵器を開発する。偵察やネット通信、衛星利用測位システム(GPS)の混乱が目的だ▼だが大量にまき散らされる破片は敵味方なく、地球全体の機能もまひさせかねない。そこまで想像できてなお、前に進むのか。

(2019年11月16日 08時00分 更新)

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