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県内初の「福祉専門」法律事務所 運営担う西尾弁護士に聞く

「支援が必要な人の身近な存在でありたい」と語る西尾弁護士
「支援が必要な人の身近な存在でありたい」と語る西尾弁護士
 岡山弁護士会が運営を支援し、採算性の低い訴訟などに積極的に取り組む都市型公設事務所「岡山パブリック法律事務所」(本部・岡山市北区春日町)が今年、認知症の人や知的障害者らの財産管理や契約を代行する成年後見業務に特化した「岡山南支所」を同市南区福成に新設した。福祉分野専門の法律事務所は県内初で、支所長として運営を担う西尾史恵弁護士(47)は「支援を必要とする人の身近な存在として使命を果たしたい」と意欲を語る。

 ―なぜ成年後見業務に特化させたのか。

 高齢化の進展に伴う需要の高まりが理由だ。実際、事務所全体として2014年ごろから成年後見の受任が増えている。6月末時点で全国の法律事務所でもトップクラスとなる814件を手掛けており、その報酬が収益の半分以上を占める。本部事務所で共に仕事をしてきた社会福祉士らと5人で、8月下旬に支所の運営を始めた。

 ―支所として成年後見を扱うメリットは。

 岡山市南区は成年後見の受任件数が特に多い地域だ。スタッフにとって本部事務所からの移動負担が減り、被後見人に近い場所で支援を展開できる。というのも、成年後見は入退院や死亡時の現場対応が求められる上、「お金がないのにタクシーに乗った」「服を着ずに外出している」といった連絡が入ればすぐに駆け付けなければならない。常に身近にいることが大切だ。

 ―成年後見業務の採算性は決して高いとは言えない。

 成年後見の報酬は現在、東京家裁が示している「目安」に基づき、通常業務の基本額は月2万円とされている。財産管理だけで事足りる人も、現場対応が頻繁に必要な人も同額だ。報酬は1年分がまとめて翌年に支払われ、実質的に最初の1年は無給となるため、個人事務所は敬遠する傾向にある。われわれは成年後見に社会的使命を見いだし、受任件数を増やすことで採算を維持してきた。そのノウハウは支所の運営にもしっかり生かしていく。

 ―支所長として、どのような運営を目指すか。

 被後見人にとってのより良い生活をいかに実現するかは、勝ち負けが決まる裁判と違って「答え」がなく、大変な部分もあるが、それだけにやりがいは大きい。既に新規依頼が続々と寄せられている。地域に根差し、スタッフ一丸となって質の高い権利擁護に取り組んでいきたい。

    ◇

 岡山南支所の開所時間は平日午前9時~午後6時。相談、問い合わせは専用電話(086―230―7355)。

 成年後見制度 認知症や知的、精神障害などで判断能力が不十分な人に代わり、弁護士や福祉関係者、親族らが預貯金の管理や福祉サービスの手続きなどを支援する制度。2000年に導入された。本人の判断能力が低い順に後見、保佐、補助の3類型がある。本人や家族が利用を申し立て、家裁が後見人らを選任する。

(2019年10月27日 15時23分 更新)

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