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“運命の瞬間”待つ創志学園・西 最速154キロ、プロに挑戦へ

最速154キロを誇る創志学園の西純矢
最速154キロを誇る創志学園の西純矢
超高校級右腕は打撃も一級品
超高校級右腕は打撃も一級品
今夏の岡山大会を前に創志学園ナインを激励する金谷温宜前主将(右端)。西(右から3人目)にとってW杯の好守の恩人でもある
今夏の岡山大会を前に創志学園ナインを激励する金谷温宜前主将(右端)。西(右から3人目)にとってW杯の好守の恩人でもある
1年夏の岡山大会決勝で救援登板、追加点を許した背番号18の西=2017年7月29日、倉敷マスカット
1年夏の岡山大会決勝で救援登板、追加点を許した背番号18の西=2017年7月29日、倉敷マスカット
おかやま山陽との決勝再試合で敗れ、肩を落とす創志学園ナイン=2017年7月29日、倉敷マスカット
おかやま山陽との決勝再試合で敗れ、肩を落とす創志学園ナイン=2017年7月29日、倉敷マスカット
甲子園デビューで創成館を相手に圧巻の投球=2018年8月9日
甲子園デビューで創成館を相手に圧巻の投球=2018年8月9日
下関国際の打者を三振に仕留め、雄たけびを上げる西=2018年8月15日、甲子園
下関国際の打者を三振に仕留め、雄たけびを上げる西=2018年8月15日、甲子園
下関国際に逆転負けを許し、仲間に抱えられて球場を後にした=2018年8月15日、甲子園
下関国際に逆転負けを許し、仲間に抱えられて球場を後にした=2018年8月15日、甲子園
2年秋の中国大会準決勝では広陵打線につかまった=2018年11月3日、倉敷マスカット
2年秋の中国大会準決勝では広陵打線につかまった=2018年11月3日、倉敷マスカット
寮生が大半を占める創志学園。体づくりの基本となる食事を管理栄養士が支える
寮生が大半を占める創志学園。体づくりの基本となる食事を管理栄養士が支える
3年夏の岡山大会は準決勝で倉敷商に屈した。最終回の攻撃で二塁で憤死し、ゲームセット=7月27日、倉敷マスカット
3年夏の岡山大会は準決勝で倉敷商に屈した。最終回の攻撃で二塁で憤死し、ゲームセット=7月27日、倉敷マスカット
最後の夏の甲子園出場は叶わなかったが、どこか晴れやかにも見えた西(中央)。精神的な成長を強く印象付けた=7月27日、倉敷マスカット
最後の夏の甲子園出場は叶わなかったが、どこか晴れやかにも見えた西(中央)。精神的な成長を強く印象付けた=7月27日、倉敷マスカット
ドラフト指名を待つ西純矢
ドラフト指名を待つ西純矢
 「プロとしてどこまでできるか挑戦したい」-。

 プロ野球ドラフト会議(17日)を前に、岡山・創志学園高3年の西純矢が言葉に静かな闘志を込める。

 今夏の甲子園出場は果たせなかったが、韓国で開かれたU18ワールドカップ(W杯、8月30日~9月8日)で大車輪の活躍。「高校BIG4」と目される評価をさらに高めた超高校級右腕は、上位指名が確実視される"運命の瞬間"を心待ちにしている

■世代別代表の「エース格」


 初の世界一を逃したW杯で、攻守に奮闘した。投手としてはエース格の活躍を見せ、4試合登板で防御率1.35(投球回13回1/3)、17三振を奪った。「フォークの落差と切れが全然違ったし、ストレートは回転が掛かっていた」。日本のボールより滑りやすく、縫い目がはっきりしているという国際球との相性がよく、この2球種を武器に海外の強打者たちをねじ伏せた。

 2次リーグ・韓国戦では、先発の佐々木朗希(岩手・大船渡)がアクシデントにより一回で降板。「立ち投げ10球くらい」とほとんど準備なしの状態で二回からマウンドに上がり、4回無失点と好リリーフした。

■奥川、佐々木から受けた刺激


 調子が悪かったという打撃は、八戸学院光星(青森)監督の仲井宗基コーチらから「へその前でボールをとらえて押し込む」よう助言され、一気に開眼した。

 W杯1次リーグ・南アフリカ戦では2本塁打8打点と爆発。通算打率5割(12打数6安打)を残し、大会本塁打王にも輝いた。

 守備でも魅せた。左翼に回った韓国戦は、左翼線への打球に素早く反応し、体勢を崩しながらも本塁にストライク返球。

 「レフトは2年生のときに守っていて、一歩目をさぼっていたら(当時主将で)センターの金谷さんによく怒られた。それが良かった」と、九回サヨナラ負けを防いだビッグプレーを振り返る。

 ドラフトの目玉とされる2人からも刺激を受けた。

 宿舎では奥川恭伸(石川・星稜)と同部屋。「奥川は寝る前に必ずストレッチをしていた。コンディションにすごく気を配っていた」

 最速163キロの佐々木からは体の使い方などを教わった。「自分が見たことのないものを見た大会。学ぶことが多かった」と総括。

 「U18のみんなと上(プロ)の舞台で対戦したい」と夢を膨らませる。

■世界のNOMO直伝の"魔球"とは


 広島市出身。同市立鈴が峰小2年で軟式野球を始め、5年までは捕手を務めた。阿品台中では硬式クラブ「ヤングひろしま」に所属。3年夏に中学硬式の日本代表「NOMOジャパン」に選ばれた際には、日米通算201勝の伝説的投手・野茂英雄氏からフォークを直伝された。

 隣県の創志学園高に進むと、1年春からベンチ入りを果たした。初めて臨んだ夏の岡山大会は救援で奮闘。140キロ台中盤の直球で押すスタイルが目を引いた。

 順調に勝ち進んだ決勝は、降雨によるグラウンドコンディション不良のため延長十一回途中、8-8で引き分けに。

 大会史上初の決勝再試合は、当時のエースが3連投の疲れもあって打ち込まれ、おかやま山陽に大量リードを許す苦しい展開となる。救援でマウンドに立った西も相手打線の勢いを止められなかった。創志学園4季連続の甲子園出場の願いは、2-9の思わぬ大敗で絶たれた。

■父の急逝を乗り越えて


 続く2年時のセンバツも逃したが、この間に飛躍の原点があった。当時「野球人生で一番悔しかった」と語った1年秋の岡山大会だ。先発した倉敷商との準決勝は1-3で敗れ、救援したおかやま山陽との3位決定戦も要所で粘れなかった。

 最大の理解者との突然の別れもあった。「甲子園に行けよ」。優しく、いつも応援してくれた父雅和さんが45歳で急逝したのは、岡山大会敗退直後のこと。

 悲しみを振り切るように、冬場は1日約20キロを走り込んだ。多い日にはブルペンで200球近く投げ込んだ。徹底的にスタミナと制球力を磨き上げていった。

■16奪三振の甲子園デビュー


 2年生となったエースは昨年夏、第100回の記念大会で鮮烈な甲子園デビューを飾った。1回戦の相手はセンバツ8強の創成館(長崎)。強打線に対し、球威十分の直球と鋭いスライダーを軸に6者連続を含む毎回の16奪三振。

 「人生で一番のピッチングだった。最初は緊張したけど、気合で乗り切ることができた」

 余裕が出た中盤以降は100キロを割るスローカーブも投げて相手打線を翻弄(ほんろう)。圧巻の123球に3万の観衆は沸き、最後の打者を力ない一飛に打ち取ると、誇らしげに右手を掲げてみせた。

 投球とは別に注目を集めた。感情を前面に出した派手なガッツポーズと雄たけび。

 投球同様に強気に見えながらも「気が弱い」(長沢宏行監督)面があった右腕にとって、自分を奮い立たせる意味もあり、岡山大会でも同じスタイルを貫いていた。

■肝に銘じる「今、ここ、自分」


 だが、下関国際(山口)との2回戦では「必要以上にほえないように」と球審から求められた。再三注意されるうち球審の口調は厳しさを増し、西はきわどいボールの判定にいら立つそぶりを見せるように。9回に2点のリードを守れなかったのは、メンタル面の影響があったのかもしれない。

 心ないやじや中傷も浴びた。結果的にこの日が西にとって、高校生活最後の甲子園マウンドになった。

 昨秋の中国大会準決勝の広陵(広島)戦にも苦い思い出がある。0-1の八回、自らのエラーを含む3失策と守備が崩壊。不満顔のエースは緊張の糸が切れたようにカバリングを怠り、野手もそれをとがめない。マウンドで孤立し、一挙6失点で今春のセンバツ出場を逃した。

 エースの存在感は絶大だ。周囲に与える影響も大きい。良くも悪くも感情をむき出しにしてきた西はここから、自分を変えるためにメンタルトレーニングに励んだ。

 創成館戦の好投にとらわれず、この瞬間に集中する▽試合の先のことを考えない▽人のせいにしないー。「今、ここ、自分」という言葉を肝に銘じた。

■最後の夏 惜敗の中で見せた成長


 身長184センチの少年がひときわ大きく見えた。ひと冬で体重を5キロ増やし、85キロとなって迎えた3年時。直球はキレが増し、同じ腕の振りから投じるスライダー、フォークの制球もアップ。

 打っても4番を任され、名実ともにチームの大黒柱へと成長を遂げていた。

 「批判されたから、きょうの自分がある」。そんな思いで臨んだ最後の夏の岡山大会は、準決勝で倉敷商に0-2で敗退を喫した。

 自身最速を1キロ更新する154キロをマークしながらも、後半は「体が少し重く、腕を振れなかった」。10奪三振の力投も勝利に結びつかず、最終回の攻撃も先頭で出塁したが後続が凡退、最後は滑り込んだ二塁で憤死した。土煙の舞うグラウンドでしばらく動くことができなかった。

 それでもこの試合、ミスをした選手を気遣って声を掛け、ピンチを迎えても笑顔で仲間を落ち着かせた。かつての独り相撲やふてくされた態度は皆無。精神的に大きくなった姿があった。

 連覇こそならなかったが5試合をほぼ1人で投げ、防御率1.32(投球回34)、46奪三振とプレー面でも見事な成長ぶりを見せた。

■岡山から26年ぶり高校生ドラ1も


 日の丸を背負い、この1年の成長の跡を示したU18W杯。帰国後は軽めのキャッチボールやランニングで疲れを取り、10月に入ってからは練習を再開した。テーマは、プロの世界を生き抜くための体づくりだという。

 過去3年、創志学園からは投手で高田萌生(巨人、2016年ドラフト5位)、打者は難波侑平(日本ハム、2017年ドラフト4位)がプロ入りしたが、その2人と比べても「西は投手として高田より上、体の強さも難波よりある」と長沢監督に言わしめるほど、突出した力を持つ。

 「どきどきしながら毎日を過ごしています」と笑顔を見せる西がドラフト1位指名を受ければ、岡山の高校生としては1993年の岡山南・山根雅仁投手(元広島)以来26年ぶりとなる。

(2019年10月17日 12時50分 更新)

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