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この地に生きる(5)三鴨裕太さん(24)=新庄村 山里の食材でもてなす古民家宿のシェフ

三鴨裕太さん
三鴨裕太さん
「新庄村ファンを増やしたい」と願い、心を込めて料理を作る三鴨さん
「新庄村ファンを増やしたい」と願い、心を込めて料理を作る三鴨さん
 築100年の古民家を新庄村が改修して7月にオープンした宿泊施設「新庄宿 須貝邸」。最大の売りが野趣あふれる創作料理。シェフの三鴨裕太(みかも・ゆうた)さんが仕入れから調理まで一人で手掛ける。

 新鮮な野菜を使った前菜、旭川の源流域で育ったアマゴ、イワナの刺し身。シシ肉はこれからが旬だ。一押しの炊き込みご飯は、アイガモ農法で栽培したコシヒカリを使用し、土鍋でふっくらと炊きあげる。

 仕事を始めるのは午前7時。道の駅「がいせん桜 新庄宿」で、取れたての野菜や山野草を仕入れる。夕食を作ると、次は朝食の仕込み。家路に就くのは午後9時を回ることもある。

 「銀座での4年間の下積みがあったからこそ、今がある」。三鴨さんはそう実感している。

 幼い時から料理を作るのが好きで、津山東高食物調理科を卒業し、東京・銀座のすし店に就職した。

 午前11時から翌午前5時まで働いた。1年目は接客、清掃、出前を担当した。休日は魚をさばく練習と料理の食べ歩きに充てた。1年たったころから包丁を持たせてもらえ、背開きや腹開きなど魚の仕込みを任されるようになった。

 一人前のすし職人になれそうだという自信が膨らんだ。同時に、いろんな料理があり、いろんな味付けがあることを知るにつけ「自分が本当にやりたい料理は何だろう」という疑問が同居するようになった。

 悩んだ末に22歳で帰郷。村立の小中学校の給食調理と、蒜山地域の定食店のアルバイトを掛け持ちし、充電期間に充てた。

 「ぜひ力を貸してほしい」。東京での修業経験を見込まれ、村から頼まれたのはそんな時だった。

 「たまたま帰ってきたタイミングで、活躍の場に恵まれたのは幸運だった」。三鴨さんは実感を込める。

 「須貝邸」の宿泊は1日2組に限定。心を込めて料理を作るだけでなく、料理についての説明をすることも大切な仕事だと考えている。

 「お客さまに村に魅力を感じてもらえるか、また来たいと思ってもらえるか、自分の言葉一つ一つが影響するだろう」と気を引き締める。

 栄養を十分に蓄えた川魚やイノシシ、農家がこだわりを持って作る野菜―。「『おいしい』と言ってもらえたら、こう教えてあげるんです。『この食材は道の駅で買えますよ』って。生産者の励みにつながれば、村はもっと元気になる」

 「料理を味わってみたい」という多くの村民の要望を受け、今月から、宿泊しなくても事前予約すれば、昼食と夕食を提供するようにした。

 「村の方に改めて地元の食のうまさを知ってもらい、一緒に須貝邸をPRしていければ」と願う。

(2019年10月10日 09時04分 更新)

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