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痛みは全て混合性疼痛 日本統合医療学会岡山支部講演から

日本統合医療学会岡山支部総会の会場となった環太平洋大学グローバルキャンパス
日本統合医療学会岡山支部総会の会場となった環太平洋大学グローバルキャンパス
学会会場の1階と2階には、体験ブースが出展された
学会会場の1階と2階には、体験ブースが出展された
「いかに便秘・下痢を治療していくか」についてご講演いただいた川崎医科大学・検査診断学の眞部紀明教授
「いかに便秘・下痢を治療していくか」についてご講演いただいた川崎医科大学・検査診断学の眞部紀明教授
特別講演にて「慢性難治性疼痛」についてご講演いただいた横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニック診療の北原雅樹教授
特別講演にて「慢性難治性疼痛」についてご講演いただいた横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニック診療の北原雅樹教授
 9月28日、環太平洋大学グローバルキャンパスで日本統合医療学会岡山支部の第3回総会・学術講演会が開かれた。会員、一般、学生など約150人が参加した。

 統合医療とは、科学的な近代西洋医学だけでなく、伝統医学や経験的な民間療法などを組み合わせて行う療法である。臨床美術、岩盤浴、水素研究、ヨーガ療法、ホリスティックケア等、さまざまな心身のケアに関するブース展示や、ランチョンセミナーに始まり、教育講演、一般発表、特別講演がなされた。

 本年度のテーマは「皆で考える統合医療 ―誰のため? なんのため? ~人生100年時代の統合医療を考える~」であり、関係者が知識を共有し学術的価値を高める努力をする会であった。

 ランチョンセミナーでは、川崎医科大学検査診断学教授の眞部紀明先生が、「いかに便秘・下痢を治療していくか」をテーマに講演された。慢性便秘症は高齢者に多く、今後も増加するようである。日常的なものとして軽んじるのではなく、薬の副作用としての便秘や腎疾患や心疾患などの疾患にも関連するため、正しい治療が必要とのことであった。教育講演と一般発表では、大学や民間団体から4人が登壇し、接骨院のなりたち、筋肉を包む筋膜に注目した施術方法、体を「ゆする」、「擦り」運動法、臨床美術などが紹介された。

 会を締めくくる特別講演では、横浜市立大学付属市民総合医療センター・ペインクリニック診療教授の北原雅樹先生をお招きし、「慢性難治性疼痛(とうつう)」についてお話をいただいた。北原教授は、マスコミでも有名な「痛み」に関する我が国の第一人者である。「急性痛と慢性痛の違い」や「診断とは何か」「痛みが難治性になる要素」などの内容についてわかりやすくご説明いただいた。

 痛みは、最終的にさまざまな情報(末梢からの信号、記憶、感情など)が統合され、脳で痛みとして感じる。痛みはいつも主観的であり、気のせいであるといった心的疼痛はない。すなわち近年は、医療に関するさまざまな情報が入りやすくなったため、人は自分の信じたい情報を信じるようになるが、痛みは全て混合性疼痛であり、原因のわからない痛みだからと言って、心因性疼痛ではなく、必ず主たる原因があることが説明された。

 例えば、3カ月以上続く、持続性又は反復性の痛みを慢性痛という。原因や機序不明の筋肉の慢性的なコリは、“筋筋膜性疼痛”という病名を良く使う。運動、体重調節、睡眠など生活習慣の改善を誘導する事により、過剰な治療への依存から脱却し、自分で治すことができるようになる。

 原因と治療についての誤解がある点としては、診断がつく=原因がわかった、原因がわかった=治療方法がある、原因がわからない=治療方法がない、のでは「ない」のである。「痛み」にとらわれるのではなく、本当に困っていることは何か、痛み以外で改善できること(過体重、痩せすぎ、睡眠、運動、骨粗鬆症、ホルモン、胃腸障害など)は何か?を探る事が重要であるとのことであった。

 また、日本において、痛み教育システムが確立されておらず、痛みの専門医が少ないことも課題として残っているそうだ。我が国の全慢性痛患者は約2,000万人と言われ、経済的損失は数兆円以上であり、痛みによる休業損失は、1兆8千億円と言われる。健康寿命の短縮や医療・介護側の負担増にもつながっており社会的影響は大きい。したがって、痛みへの戦略的取り組みが急務であると締めくくった。

 医療関係者には、厚労省のホームページから閲覧可能な「慢性痛治療ガイドライン」をご覧いただき、NPO法人いたみ医学研究情報センター主催の「医療者研修会」にぜひとも参加いただきたいとのことであった。

 長引く痛みに悩まされている方もいらっしゃることだろう。生活習慣を見直し、改善するだけで痛みから解放されることもあるようだ。誰もが経験する痛みも正しい知識を得ることにより、少しは緩和されるかもしれない。興味ある方は以下をご覧いただきたい。

「日本の腰痛 誤診確率80%」集英社インターナショナル
「慢性痛は治ります!-頭痛・肩こり・腰痛・ひざ痛が消える-」さくら舎



三浦 孝仁 みうら・こうじ Ph.D. IPU環太平洋大学・体育学部長・スポーツ科学センター長。岡山大学名誉教授。公益財団法人岡山県体育協会スポーツ医・科学委員会委員。一般財団法人岡山市体育協会常務理事・スポーツ振興委員会・委員長。NPO HSA JAPAN代表理事。岡山大在職中に顧問を務めた同大ウェイトトレーニング部は10度の全国制覇を果たし、ハンドボール部は過去最下位から1部上位へ引き上げるなど、長年に渡りスポーツ教育・指導・研究やキャリア教育などに携わった。著書に「筋トレっち 走れるカラダの育て方」(東邦出版)など。早稲田大卒、日本体育大大学院 修了。1957年生まれ。

(2019年10月08日 12時50分 更新)

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