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この地に生きる・序章(下)戻らぬ理由 職種や所得 都市と差

この地に生きる・序章(下)戻らぬ理由 職種や所得 都市と差
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この地に生きる・序章(下)戻らぬ理由 職種や所得 都市と差
この地に生きる・序章(下)戻らぬ理由 職種や所得 都市と差
 美作地域(10市町村)では多くの地方と同様に、高校卒業後の世代が一気に市外へ転出し、地域の活力を維持する上で大きな課題となっている。

 若者らが地元を離れる理由を知る一つの手掛かりが、一部事務組合「津山広域事務組合」の調査。2017年度に美作地域の全11高校の2年生と津山高専4年生の計1965人を対象に就職に関する考え方を尋ねた。

 同組合を構成する津山市、勝央、奈義、鏡野、美咲、久米南町をエリアとする津山圏域で就職を希望したのは3割弱。2倍以上の7割近くが圏域外を望み、関西圏(23.3%)の人気が最も高かった。

 圏域内の最多は津山市内の13.7%。勝田、苫田、久米郡内は合計で2.9%にとどまった。「どこでも」が10.7%あることや、その他県内(8.9%)に真庭、美作市、西粟倉、新庄村が含まれる可能性はあるものの、津山市への流出も周辺自治体にとっては懸念される。

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 圏域外を希望する理由は「自立したい」(18.0%)、「都会で生活したい」(15.8%)、「希望する仕事がある」(15.4%)の順で割合が高い。一方、「地元に住みたくない」(7.8%)、「地元に希望したり、スキルを生かせたりする仕事がない」(6.5%)という否定的な動機も目立った。

 圏域内については「家族がいる、地元」(53.8%)と「地域が好き」(14.2%)で約7割を占める。地元愛の醸成はもちろんだが、都会に負けない魅力づくり、職種の少なさへの対応なども必要と言えそうだ。

 給料や待遇を理由にしたのは生徒全体の3%ほど。進学、就職前の生徒たちの関心は高くはない。しかし、美作地域を離れて働く都市部の若者らからは「同じような給料をもらえる仕事が地元にないから帰れない」との声も聞かれる。

 非課税世帯を除く1人当たりの年間所得(18年度)について、全1741市区町村の上位と下位の3位までと県内市町村を表にした。

 県内で300万円を上回っているのは岡山、倉敷市と早島町のみ。美作地域の最高は津山市の279万5千円で、全国順位でみればちょうど真ん中あたりに位置する。それぞれの地域で住居費などの生活にかかるコストが違うため単純比較はできないが、県内27市町村では津山市は6位ながら、低い方から6位まではエリアの市町村となっている。

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 「一度外に出た若者が地元に戻り、SNS(会員制交流サイト)で外部の人材とつながることで地域所得を高めるビジネスを創出する機会は増やせるはず」とするのは岡山大大学院の中村良平特任教授(地域公共政策)。「今回のような調査をさらに行い、若者にとって魅力のある仕事や暮らしの内容を関係者がしっかり把握した上で対策を打てば、好循環を生み出せるだろう」と話す。

 子どもたちが地域の企業を見学するツアー▽地元企業に就職した場合に学生時代の奨学金の返済を一部支援▽地元就職を増やすため学校側就職担当者との意見交換会―など、行政や企業側も手をこまねいているわけではない。だが、流出を止めるのは容易ではなく、地域を挙げた一層の努力が必要だろう。

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 「この地に生きる―作州の若手」の「序章」は今回で終わり。次回から、美作地域に魅力や可能性を感じて活動する20~40代の起業家や農業者、UIJターン者らを取り上げる。

(2019年10月03日 09時43分 更新)

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