山陽新聞デジタル|さんデジ

魅力発見 秋の島旅(下)伊吹島・粟島 生命と向き合う感覚

 観音寺港から船に揺られて25分。燧灘(ひうちなだ)のほぼ中央に浮かぶ伊吹島(観音寺市)は、瀬戸内国際芸術祭の会場で最西端。特産のイリコが有名だが、平安時代のアクセントが残るなど民俗学的にも知られ、ちょっとした異文化に触れた気分になれる島だ。

 港に降り、焼き板の黒い壁を縫うように走る坂道の先に見えてきたのは、巨大な根のような栗林隆さんの作品「伊吹の樹(き)」。展示場所は「出部屋(でべや)」と呼ばれた産院の跡。1970年ごろまで続いた島の風習で、出産を終えた母子が労働から離れて共同で生活したという。

木の根が上に伸びるような形をした「伊吹の樹」=伊吹島
木の根が上に伸びるような形をした「伊吹の樹」=伊吹島


 内側の鏡張りの空洞で産道をイメージしたという栗林さん。「生命が誕生したこの場所を島のルート(根)と捉えた」とコンセプトを語る。

 島民が船に持ち込む家形のお守り「ふなだまさん」をモチーフにしたアートなどもあり、次々と歩を進めたくなるが、島内は急勾配の坂続き。疲れた時は、横浜市を拠点に活動する建築グループ・みかんぐみが明治大の学生と制作した作品兼休憩所「イリコ庵」でひと休み。イリコの島らしく、どこからか漂ってくる甘く優しいだしの香りも、ホッとさせてくれる。

 荘内半島を挟んで伊吹島の北東約10キロにあるのが粟島(三豊市)。JR予讃線詫間駅で下車し、須田港(同)からフェリーで15分の距離。日本初の海員養成学校跡を活用した「粟島海洋記念館」や中学校跡に海に関するアートが並ぶ。

海の生物たちに食べられるクジラの遺体から着想を得たという大小島さんの「生命のスープ」=粟島
海の生物たちに食べられるクジラの遺体から着想を得たという大小島さんの「生命のスープ」=粟島


 中でも、クジラの遺体が鳥や魚に食べられる様子に着想を得たという大小島真木さんの「生命のスープ」の存在感は際立つ。革で作ったクジラに魚やサンゴ、プランクトンなどが描かれ、命と向き合っているような神聖な感覚になった。

 アートを食べられるのもこの島ならでは。ベトナム人のディン・Q・レさんの「フォうどん」(千円)は、一見定食のようだが、店を含めた「PhoUdon(フォうどん)&COFFEE(コーヒー) HOUSE(ハウス)」と題した作品の一部。ベトナムの麺料理フォーのだしで味わう讃岐うどんで、郷土料理「いりこ飯」がセットになっている。舌でも芸術祭を楽しもう。

魅力発見 秋の島旅(下)伊吹島・粟島 生命と向き合う感覚


瀬戸内国際芸術祭の魅力を最新記事で紹介

(2019年10月03日 09時29分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ