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松岡良明賞の平塚純一氏に聞く 放射腺がん治療で生活の質保つ

平塚純一氏
平塚純一氏
 がん撲滅に功績のあった個人・団体をたたえる山陽新聞社会事業団の第24回「松岡良明賞」を受賞した川崎医科大(倉敷市松島)放射線腫瘍学教授の平塚純一氏。乳がんや前立腺がん、頭頸部(けいぶ)がんを中心に、根治と生活の質(QOL)の維持を目指す治療に長年尽くしてきた。平塚氏に、放射線によるがん治療の現状と将来の展望を聞いた。

 ―放射線は手術、抗がん剤と並び、がんの三大療法と呼ばれる。放射線による治療の特徴は。

 放射線治療は頭の先から足の先まで全身が対象になる。根治を目指した照射から、しびれを取ったり、苦痛を和らげたりする治療まで“守備範囲”も広く、患者さんの容体を十分に把握して最善の選択を考え、治療計画を立てることが欠かせない。医療者にもいろいろな種類のがんについての幅広い知識が求められる。

 放射線治療は体にメスを入れることなく、細胞レベルでがんを死滅させるため、臓器の機能や形が温存できる。がんを根治することに加え、QOLを維持できる点が大きなメリットだ。

 ―川崎医科大付属病院は、乳がんや前立腺がんの治療で積極的に放射線治療を取り入れている。

 乳がん治療では全国に先駆けて導入した、乳房をできるだけ残しながら病巣を切除する「乳房温存手術」で、術後の局所再発を抑える目的で放射線治療を併用している。患者さんの仕事や通院の都合に配慮し、一般的な照射回数の治療だけでなく、医学的根拠に基づいたより短期間の照射も手掛けている。

 前立腺がんに関しては、線源を一時的に体内に留置するHDR(高線量率組織内照射治療)と呼ばれる治療を全国で2番目に早い1997年から行っている。症例数は1200例を超え、国内トップクラスを誇る。

 ―がん細胞にホウ素剤を取り込ませてから、中性子線を照射する新しい治療法「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の開発にも取り組んできた。

 今から35年ほど前、神戸大にいたころに動物実験に参加したのがきっかけだ。1回の照射でブタの皮膚がんがきれいに治り、非常に驚いた。87年には臨床研究が始まり、1例目にも立ち会った。効果を目の当たりにするたび、早く多くの患者さんを救えるようにしたいと思ってきた。川崎医科大へ赴任後は皮膚がんに加え、頭頸部がんも対象に臨床研究を続けている。

 BNCTは早期の実用化を目指す国の「先駆け審査指定制度」の対象に選ばれており、近い将来の公的保険適用が見込まれる。細胞・動物実験から始まり、一つの治療法として確立するまでを体現できる研究者はそういないだろう。そういう意味では恵まれていたと思う。

 このような仕事ができたのも関係する教室、先生方の支援のおかげ。この病院だからこそだと感謝している。今後もBNCTや放射線治療が市民に正しく理解してもらえるよう、お手伝いをしていきたい。

 ひらつか・じゅんいち 1981年神戸大医学部卒。兵庫県立成人病センター(現がんセンター)などを経て86年に川崎医科大助手となり、2008年から教授。川崎医療福祉大医療技術学部診療放射線技術学科長も務める。11~15年に日本中性子捕捉療法学会長。日本医学放射線学会専門医、日本放射線腫瘍学会放射線治療専門医、日本中性子捕捉療法学会認定医。京都市出身。64歳。

(2019年09月23日 10時02分 更新)

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