山陽新聞デジタル|さんデジ

『サギデカ』店長のあのシーンに込めた制作陣の覚悟と脚本家・安達奈緒子の魅力

土曜ドラマ『サギデカ』警視庁捜査二課の女性刑事・今宮(木村文乃)を主人公に、特殊詐欺グループの摘発に心血を注ぐ姿を描く(C)NHK
土曜ドラマ『サギデカ』警視庁捜査二課の女性刑事・今宮(木村文乃)を主人公に、特殊詐欺グループの摘発に心血を注ぐ姿を描く(C)NHK
 NHKで放送中の土曜ドラマ『サギデカ』(毎週土曜 後9:00 全5回)。主人公の警視庁捜査二課の女性刑事・今宮(木村文乃)が特殊詐欺グループの摘発に心血を注ぐ姿を描く社会派ドラマ。14日に放送された第3話で衝撃的だったのは、振り込め詐欺グループで、詐欺アジトのリーダー、“店長”と呼ばれていた男(玉置玲央)の死体を加地(高杉真宙)が発見したシーンだ。

【写真】“店長”と呼ばれていた男を演じた玉置玲央

 加地が海岸にやってきて、店長の携帯電話を拾ったあたりで察するものはあったが、まさか全裸で打ち捨てられていたとは。SNSにも「まさかの全裸」「なぜ全裸?」「全裸で海に捨てられて、むごい」など衝撃を受けた視聴者の感想コメントが多数上がっていた。

 「あのシーンは、初期のプロット(台本構成)からああいうシーンでした。安達さんや西谷Dに相当な覚悟とこだわりがあった」と制作統括の須崎岳プロデューサー(NHKエンタープライズ)が明かす。オリジナル脚本を手掛けた安達奈緒子氏や演出の西谷真一氏ら制作陣の思いを、須崎氏が代弁する。

 「振り込め詐欺に手を染めて、行く末に待っているのは悲劇なんだ、ということ。それは、表現して伝えないといけないと思いました。

 人を騙して、若者たちに受け子やかけ子をやらせて、アジトに警察が踏み込んできたら自分だけ逃げおおせるズルい“店長”だけれども、加地の境遇にやさしく寄り添うことができる、根っからの悪人でもない。むしろ足を洗いたいと思っていて、だけど抜けられなくて。結局、組織を裏切るようなことをした最期があの姿。

 それを見た加地はものすごくショックを受ける。自分がいま足を突っ込んでいる世界がどんな世界か、現実はどんなにシビアか、感じて、その後の展開にもつながっていく。そこに真実味をもたせるのは重要なことでした。加地だけでなく、視聴者の皆さんにも同じように感じてもらわないといけないし、振り込め詐欺に関わっている若者たちがこのドラマを見ているかわからないけれども、彼らにも届いて欲しいと考えていました。プロットの段階からあのシーンにこだわった安達さんはさすがだったのではと思います」。

 安達氏は、このドラマの「作者のことば」として、「このドラマはフィクションです。けれど詐欺によって財産を奪われ、生命をも奪われた人が現実に存在します。罪を償うために青春の一時を奪われ、それでも生きていこうとしている人がいます。その重さを考えると、ドラマという虚構に作り換えるのはとても怖い。一方でこうも考えました。わたしたちが真実を真実のとおりに理解するには複雑過ぎる世の中にあって、虚構はストレートに、起きていることの本質に思いを馳せるスイッチになり得はしないだろうか」と、コメントを寄せていた。

 実際の撮影現場でも、“店長”の男役の俳優・玉置玲央は吹き替えなし、体当たりで撮影に臨んだ。振り込め詐欺という犯罪組織に絡め取られてしまったとこの悲劇を痛切に描写し、視聴者にも衝撃を与え、名場面となった。

 脚本の安達氏は、『リッチマン、プアウーマン』(2012年、フジテレビ)、『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命- 3rd season』(17年、フジテレビ)&同劇場版(18年)などを手掛け、NHKでは『宮崎のふたり』(16年、BSプレミアム)や『透明なゆりかご』(18年、総合)など。今年4月期の『きのう何食べた?』(テレビ東京)も担当した。10月期は『G線上のあなたと私』(TBS)が控える。

 安達氏と須崎氏のタッグは『透明なゆりかご』に続いて2回目。今回、安達氏は社会派刑事ドラマ初挑戦となった。それもオリジナル企画ということで、安達氏、演出の西谷氏、そして須崎氏の3人は、警察関係者や詐欺の当事者への取材もできる限り行ったという。

 須崎氏は「安達さんは執筆にあたって、フィクションだからこそ、取材を重視される方で、作品づくりに対してとても真摯な人です。自分の思い込みや決めつけでは決して書かない、謙虚さがある。今回も取材でいろんな方々にご協力いただきお話を伺わせていただきましたが、当事者の方々から、何を大事に生きてきたか、どんなことが許せなくて、どんなことに幸せを感じるのか、といった内面的なことから、しゃべり方や佇まいなど外見的なことまで感じ取って、それが登場人物の描写やせりふに存分に生きていると思います」と、“脚本家・安達奈緒子”の魅力を語っている。

 21日放送の第4回のサブタイトルは「金と命」。店長の死に加地が関わっているとにらんだ今宮と森安(眞島秀和)は、メンバーを総動員して行方を追うが、加地の消息はぷっつりと途絶えてしまう。そんな折、戸山(清水尋也)が、被害額は1000万円以上ばかりという高額の振り込め詐欺の動きを察知する。その被害状況を精査した今宮は、ある事に気づく。一方、新薬承認の折衝に行きづまった廻谷(青木崇高)は、とある人物にひそかに会いに行く…。

木村文乃、詐欺犯と戦う“ヒーロー”熱演 “ヒロイン”は高杉真宙!?
木村文乃主演『サギデカ』詐欺グループのトップは田中泯
料理好き木村文乃、皿投げシーンに困惑「なぜ、この私に割らせるの…」
木村文乃主演「殺人分析班」シリーズ第3弾、青木崇高、菊地凛子らキャスト発表
木村文乃、主演ドラマ会見中に停電も動じず トークで場をつなぐ

(2019年09月21日 14時20分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ