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大学入試の英語 教育現場の不安に応えよ

 大学入試センター試験の後継となる大学入学共通テストの英語に導入される民間検定試験を巡る懸念が深まっている。全国高等学校長協会(全高長)が先日、来年4月からの実施を延期した上で、大幅な見直しを求める要望書を文部科学省に提出した。

 異例と言える高校現場の動きの背景には、受験生の切実な不安があろう。文科省や大学入試センターは重く受け止めねばならない。

 共通テストは今の高校2年生から行われる。英語の民間検定試験は、現行のセンター試験で評価する「読む・聞く」だけではなく、「書く・話す」技能も問うため、センターが認定した6団体7種類を活用する。

 4~12月に受けた最大2回分の結果を使うことができ、成績はセンター経由で大学など出願先に送られ、出願資格や合否判定に用いる。

 全高長の要望の背景には、多くの受験が見込まれる「英検」の予約申し込みが18日~10月7日に迫っていることがある。

 一方、他の民間試験は日程や会場など明らかになっていない部分がいまだに多い。情報がそろわず、生徒が自分に適した試験を選べる状況でない中、予約を迫られていることは酷である。

 全高長が7月、全国470校に行ったアンケートでは、実施を延期すべきだと回答した高校が7割弱に上った。課題は「経済格差」や「公平・公正性」、「地域格差」が多く挙がった。住む地域や家計の状況で試験を受ける機会が左右される心配や、異なる試験の成績を同列に比べることへの疑問は拭えていない。

 民間検定試験のうち「TOEIC」が参加を取り下げた7月にも、全高長は不安解消を求める要望をした。だが、十分な対応がなされなかったとしている。

 情報が足りないと訴える高校現場の声に応えて文科省は先月下旬、関連情報を集約したサイトを公開したが、大学側も準備が進んでいないことが浮き彫りになった。

 全国の国公私立大の3割がこの時点で、民間検定試験の利用の有無が明らかになっていなかった。対応を決定した中には全く利用しない大学も含まれ、「利用する」としたのは全体の5割だった。

 先日就任した萩生田光一文科相は記者会見で「受験生が実験台になるような制度であってはならない」と述べた。その言葉の中身が問われる。

 前任の柴山昌彦氏は延期について「かえって大きな混乱を招く」と否定した。そうしたかたくなな姿勢が混乱を深めたことも否めない。

 英語の総合的な技能を問う意図は否定しないものの、現時点で民間試験の活用には課題が多すぎる。教育現場の声に応えて、早急に対応を検討するべきである。文科省は制度設計をした以上、センターに任せず責任を持って見直すことが求められる。

(2019年09月17日 07時30分 更新)

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