山陽新聞デジタル|さんデジ

風疹の流行拡大 社会全体で防止に努めよ

 国内で2018年夏に始まった風疹の流行が止まらない。既に5千人以上が感染し、国立感染症研究所は19年に入ってから9月1日までの累積患者報告数が2100人を超えたと発表した。昨年を大きく上回るペースで増えており、予防接種による感染拡大防止が急務だ。

 風疹はウイルスが引き起こす感染症で、症状は発熱、発疹など軽いものから重い合併症の併発まで幅広い。特に妊娠中の女性がかかるとおなかの赤ちゃんが目や耳、心臓の障害を伴う「先天性風疹症候群(CRS)」になる危険があるため軽視できない。

 国際的に完全排除が目標とされており、南北アメリカ大陸や豪州では数年前に達成したとの報告がある。日本政府も東京五輪・パラリンピックが開かれる20年までの撲滅を目指してきた。今が正念場である。

 風疹の流行は周期的に繰り返され、直近では12~13年の2年間で1万6千人を超える患者が出た。この影響で45人がCRSと診断されている。今回の流行では5年ぶりとなるCRSの発症が3件確認された。深刻に受け止めなければならない。

 最も有効な予防策はワクチンの接種である。だが予防接種制度が変遷する中で、現在40~57歳の男性はこれまで一度も接種機会が得られなかった。この層が感染者の多くを占め、流行を広げる原因になっているとみられる。

 厚生労働省は緊急対策として19年度からの3年間、該当する世代の男性約1500万人が免疫を持っているかどうかを調べる「抗体検査」と、抗体が不十分な場合の「ワクチン接種」をいずれも無料で受けられる制度を始めた。未就学児対象の定期接種、妊娠を希望する女性らに行っている抗体検査の費用助成に追加した措置で、免疫力の底上げに集中して取り組む考えだ。

 対象者は、市町村から送られるクーポン(無料受診券)を使って指定医療機関などを受診する。ワクチン供給の調整もあり年度ごとに人数が決まっているが、クーポンが届いていない人も市町村に申請すれば発行してもらえる。居住地以外でも使えるので、まん延を防ぐには早急な受診が望ましいだろう。

 ただ、対象が働き盛りの年代ということもあり、初年度分の約646万人のうち抗体検査を受けた人は5月時点で約2%にとどまる。岡山県では対象の計約21万3千人の半数近くにクーポンを発行済みで、利用状況を調査中の県健康推進課は「積極的に周知していきたい」としている。

 職場や夜間・休日の医療機関で接種できるようにするといった対応も求められよう。風疹は2~3週間と潜伏期間が長いことなどから感染に気付きにくく人にうつしやすい。接種で得た抗体が年数を経て減る場合もある。社会全体で当事者意識を高め、流行を抑えたい。

(2019年09月14日 08時00分 更新)

あなたにおすすめ

ページトップへ