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シルバー人材 若手の60代手薄に 企業の雇用延長影響、入会呼び掛け

草取りに励んでいる坂田さん(右)らのグループ。会員不足が課題の倉敷市シルバー人材センターを支える大きな力だ
草取りに励んでいる坂田さん(右)らのグループ。会員不足が課題の倉敷市シルバー人材センターを支える大きな力だ
倉敷市シルバー人材センター
倉敷市シルバー人材センター
坂田さんたちが丁寧に草取りした庭
坂田さんたちが丁寧に草取りした庭
休憩時間にお茶を飲みながら、おしゃべりを楽しむ4人
休憩時間にお茶を飲みながら、おしゃべりを楽しむ4人
仕上げたばかりの筆耕作品を広げ仕事への意欲を語る加藤さん
仕上げたばかりの筆耕作品を広げ仕事への意欲を語る加藤さん
シルバー人材 若手の60代手薄に 企業の雇用延長影響、入会呼び掛け
 シルバー人材センター(SC)が人材不足に頭を痛めている。2009年度に79万人を超えていた全国の会員数は約71万人に減った。入会対象となる60歳からの世代が、企業の雇用延長で集まりにくくなっているという。高齢者の就業や生きがいづくりで大きな役割を果たしてきたSCの現状を倉敷市で取材した。

 「新規入会が伸び悩んでいる。会員の高齢化が進み、仕事の依頼に十分応えられないことがある」。倉敷市シルバー人材センター(倉敷SC、同市笹沖)の岩瀬吉晴理事長が課題を挙げる。

 倉敷SCの会員数は、市町合併に伴い現体制となった2005年度は2205人だったが、18年度は1478人。平均年齢は70・3歳から73・8歳に上がった。60代の割合は全体の25%、65歳未満は5%弱となっている。

 背景にあるのが「65歳定年」だ。企業の定年はかつては60歳が一般的だったが、13年の法改正で希望者を65歳まで継続雇用することが義務付けられた。これが大きな要因となり、全国的にSCで“若手”の60代が手薄になっている。

 「シルバーには希望する仕事がない」との声も少なくない。一般事務や駐車場管理などを求める人が多いのに対し、そうした仕事の依頼は少ないというミスマッチが生じている。

 人員不足により倉敷SCは、年間1200件以上の依頼がある樹木せん定の受注を7月下旬から止めている。来年1月まで再開できない見通しだ。同様に草刈り、草取りは1カ月待ち。こうした状況はここ数年続いているという。依頼に応えきれないことも影響し、06年度に過去最高の約6億円だった倉敷SCの受注額は18年度、5億円を割った。

 「70歳定年時代」の足音も聞こえてくる中で「われわれも変化していかなければならない。地域の役に立ち、シニア世代の生きがいにつながる仕事を増やし、SCの評価を高めていきたい」と岩瀬理事長。「一線を退いた人たちが、自由な時間を使ってそれぞれの経験や得意なことを生かしてもらえれば」と呼び掛ける。

 倉敷SCは、男性会員の半数に満たない女性を増やし、70代以上の活躍の場を広げていく方針。そうした人材を生かして空き家の管理、ちょっとした家具や建具の修理、介護・育児支援、産業界の人手不足分野のサポートといった家庭の困り事や地域の課題に対応した仕事を掘り起こす考えだ。

 8月下旬、倉敷市粒江の空き家となっている民家の庭で女性4人が草取りに励んでいた。倉敷SCに所属する60~80代のグループ。酷暑の中、黙々と手を動かし、休憩時間にはお茶を飲みながら、世間話に花を咲かせた。

 会員歴約25年の坂田照子さん(86)は「幾つになっても働けて、喜んでもらえるのは幸せ。いただいたお金で外食したり、ひ孫にお小遣いをあげたりして、生活に張りがでますよ」とやりがいを語った。

■「生涯現役」95歳加藤さん

 倉敷SCでは、最高齢95歳の会員が活躍している。同市真備町川辺の加藤久子さん。郵便の宛名や賞状の文言などを毛筆でつづる「筆耕」のエキスパートだ。

 加藤さんは小学校教諭を務めた後、1991年、真備町シルバー人材センター(現・倉敷SC)の開設に携わり、会員になった。

 暑中見舞い、年賀状、卒業証書、会合の式次第や懸垂幕、表札…。心を込めて振るう筆に依頼は絶えない。「私にできるのは書くこと。それで人さまのお役に立ち、この年でも仕事を頼まれるのがうれしい」と言う。

 シルバー人材センターは企業の雇用延長の影響などで60代の入会が伸び悩み、人手不足が課題に。真備町地区では昨年の西日本豪雨で被災した会員の多くが活動できない状態だ。加藤さんも市内のみなし仮設住宅に身を寄せていたが、8月に自宅の修繕を終え、本格的に復帰した。

 超高齢化社会でシニアの活躍に期待が掛かる中、「生涯現役」を地で行く加藤さん。「与えられるのではなく、自分で働いて手にする喜びが生きがいになるんですよ」と語るまなざしは力強い。

 ◇シルバー人材センター 

 定年退職者ら高年齢者に、臨時的・短期的または軽易な業務を提供する組織。1975年に東京で先駆けとなる「高齢者事業団」が創設され、その後、国の補助事業として全国展開が始まり、86年に法制化。岡山県内のSCは21カ所。会員は7713人(7月末現在)で、ピークの2005年度は1万18人だった。

(2019年09月14日 07時00分 更新)

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